集中治療室における多剤耐性病原体の院内感染に関する臨床予測モデル:システマティックレビュー

2026.07.18

Clinical prediction models for hospital-acquired infection of multi-drug-resistant organism in intensive care units: a systematic review

P. Li*, Y. Bai, X. Yuan, H. Zhang, F. Li, J. Liu, J. Du, Y. Xing
*Peking University Third Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2026) 173, 294-306

多剤耐性病原体(MDRO)感染は、集中治療室(ICU)において患者安全性に重大な脅威をもたらす。リスク予測モデル(RPM)は早期発見のための有望なツールであるが、それらの安定性と一般化可能性は依然として不明である。本システマティックレビューでは、成人 ICU 患者における MDRO 感染に関する RPM の状況、方法論的質および性能を評価することを目的とした。5 つのデータベースにおいて、2025 年 7 月 30 日までに公表された研究を検索した。予測モデルを開発または検証した研究を対象とした。特性、予測因子、方法および性能に関するデータを抽出した。質は Prediction model Risk Of Bias Assessment Tool(PROBAST)を用いて評価した。100 個の予測モデルを含む、62 件の研究を解析に組み入れた。ほとんどが、中国本土の単一施設後向き研究であった。予測因子を 10 領域に分類したところ、抗菌薬使用、併存疾患および侵襲的処置が最も多く組み込まれていた。ロジスティック回帰が最も多く用いられた手法であった。モデルの検証は不十分であり、37 件では詳細な検証が報告されず、外的妥当性検証を実施していたのは 17 件のみであった。PROBAST により、87.1%の研究において高いバイアスリスクが示され、その主な原因は、不適切な予測因子の処理、最適ではない変数の選択、適切な検証の欠如などの解析の欠点であった。システマティックレビューにより、既存の RPM には方法論的限界があり、一般化可能性が制限され、臨床適用が妨げられることが明らかになっている。今後の取り組みにおいては、動的予測因子の組込み、厳密な外的妥当性検証の実施、大規模な前向き多施設データに基づくモデルの開発に焦点を合わせるべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

ICU における MDRO 感染の予測モデル 62 研究・100 モデルをまとめたレビューで、抗菌薬使用、侵襲的デバイス、在院・ICU 滞在期間などが多くのモデルに組み込まれていた。一方で興味深いのは、環境清掃、手指衛生の遵守、患者配置、抗菌薬適正使用といった感染対策そのものを示す指標がほとんど考慮されていなかった点である。予測モデルは一見良好な成績を示すものの、多くが中国の単施設・後向き研究で、外部検証も 17 研究にとどまり、研究方法にも問題が多かった。現時点では既存スコアをそのまま導入するより、ICU では患者の状態や抗菌薬・デバイス使用を経時的に捉えつつ、手指衛生、環境整備、患者配置、抗菌薬適正使用など、自施設で改善可能な要素も合わせて評価する視点が重要である。将来の予測モデルにも、こうした日常の感染管理活動を反映させることが期待される。

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