医療器材洗浄工程における洗浄効率に対する水の硬度および洗浄剤の比率の影響とそれらの交互作用
Effects of water hardness and cleaning agent ratio on the cleaning efficiency in medical device cleaning processes and their interaction S. Zeng* *Sichuan University, Sichuan University affiliated Chengdu Second People’s Hospital, China Journal of Hospital Infection (2026) 173, 1-10
目的
本研究の目的は、水の硬度および洗浄剤の比率が、304 ステンレス鋼製の医療器材の洗浄効率に及ぼす影響と、それらの交互作用機構を検討し、医療器材洗浄工程を最適化するための理論的基礎を提供することであった。
方法
単一要因実験および L25(52)直交計画を用いて、5段階の水の硬度(50 ~ 250 mg/L)および洗浄剤の比率(1:50 ~ 1:250)が洗浄効率に及ぼす影響を検討した。残留汚染物質を紫外可視(UV-Vis)分光光度法を用いて定量し、表面の形態を走査型電子顕微鏡で観察し、表面張力測定および動的接触角分析によって洗浄効率を評価した。応答曲面法を用いて、洗浄工程のパラメータを最適化した。
結果
水の硬度の上昇とともに、洗浄効率は有意に低下した(P < 0.05)。水の硬度 50 mg/L で洗浄効率は最も高く(97.5%)、250 mg/L では 65.0%に低下した。洗浄剤の比率は最適値を示し、1:100 の比率で 95.0%の洗浄効率を達成した。分散分析(ANOVA)では、水の硬度(F = 50.23)および洗浄剤の比率(F = 30.45)の両方が、洗浄効率に有意な影響を及ぼすことが明らかになり(P < 0.001)、有意な交互作用効果が認められた(F = 3.67、P = 0.002)。水の硬度が低い条件下(50 ~ 100 mg/L)では、洗浄効率に対する洗浄剤の比率の影響はわずかであったが、硬度が高い条件下(200 ~ 250 mg/L)では、洗浄効率を維持するためにより高濃度の洗浄剤が必要であった。応答曲面最適化により、水の硬度 80 mg/L および洗浄剤の比率 1:120 が、最良の洗浄性能をもたらすことが示された。
結論
水の硬度は、界面活性剤の効果に影響を及ぼすことによって洗浄効率に有意に影響し、水の硬度と洗浄剤の比率との間には顕著な交互作用がある。最適な洗浄効率を達成するためには、洗浄剤の比率を水の硬度の条件に基づいて適切に調整すべきである。具体的には、低硬度条件下(50 ~ 100 mg/L)では洗浄剤の比率が 1:50 ~ 1:150 のときに 95%を超える洗浄効率が達成される一方、高硬度条件下(200 ~ 250 mg/L)では許容できる洗浄効率を維持するためにより高濃度(1:50 ~ 1:100)が必要である。本研究の結果は、医療器材洗浄の質を高め、運用費用を低減するための、重要な実用的指針となる。
監訳者コメント:
医療器材の洗浄では、洗浄剤の種類や濃度だけでなく、使用する水の硬度も洗浄性能を大きく左右することを示した実験研究である。水の硬度が 50 mg/L から 250 mg/L へ上昇すると洗浄効率は 97.5%から 65.0%へ低下し、高硬度水ではより高濃度の洗浄剤が必要となった。一方、洗浄剤は濃ければよいわけではなく、過度な濃度では発泡などにより効果が頭打ちになる可能性も示された。感染管理の現場では、再処理工程を評価する際に洗浄剤の希釈だけでなく、自施設の水質、とくに硬度や水処理設備の管理状況にも目を向けたい。本研究は 304 ステンレス鋼、人工汚染、単一の洗浄剤を用いた実験であり、示された濃度をそのまま実臨床に適用するものではない。洗浄不良時に「手順」だけでなく「水質」も確認するという実践的な視点を与えてくれる。
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