クローン関連性のある緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の十二指腸内視鏡を介した隠れた伝播:長期にわたるエピソードの微生物学的およびゲノム的調査★★
Silent transmission of clonal Pseudomonas aeruginosa via duodenoscopes: microbiological and genomic investigation of a prolonged episode A. Cissé*, A. Morin-Le Bihan, M. Pagenault, V. Cattoir, S. Reissier, G. Ménard *CHU Rennes, Department of Bacteriology and Hospital Hygiene, France Journal of Hospital Infection (2026) 169, 15-23
背景
十二指腸内視鏡に関連する感染症は通常、多剤耐性病原体(MDRO)と関係しており、アウトブレイク調査中に検出される。しかし、MDRO 以外の病原体による伝播の真の負担は、依然としてほとんど推定されていない。本研究では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の十二指腸内視鏡を介した隠れた伝播の長期にわたるエピソードを報告する。
方法
2021 年 5 月から 2022 年 12 月にかけて、フランスの 3 次病院 1 施設で前向きおよび後向き調査を実施した。症例は、十二指腸内視鏡 D2 による内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を実施され、緑膿菌の感染症または保菌が認められた患者と定義した。十二指腸内視鏡のサンプリングは国内ガイドラインに従って行った。分離株の特徴を、抗菌薬感受性試験、定量的アンチバイオグラム、フーリエ変換赤外分光法、および全ゲノムシークエンシング(WGS)を用いて明らかにした。すべての十二指腸内視鏡についてエピソード後に縦断的サーベイランスを実施した。
結果
2021 年 4 月および 7 月に、ルーチンの微生物学的検査では適合であったにもかかわらず、患者 8 例で D2 による ERCP 後に緑膿菌の感染または保菌が認められた。D2 が不適合とされたのはようやく 2021 年 10 月のことであり、これにより持続的な汚染が明らかにされた。患者 2 例は胆管以外の感染症を発症し、このことから見逃されている伝播経路が示唆された。前向きサーベイランスの実施中、十二指腸内視鏡 D4 には、さらに症例 2 例で使用後に汚染が認められた。WGS から、すべての患者分離株ならびに D2 および D4 からの分離株で、クローン関連性のあるクラスター(ST1320)が確認された。分離株の類似性(一塩基多型 0 ~ 6 個)から、持続的なデバイス汚染と検出の遅延が裏付けられた。
結論
本研究では、クローン関連性のある緑膿菌による十二指腸内視鏡の汚染が、ルーチンの検査と厳格な再処理にもかかわらず検出されないまま持続していた可能性が実証されている。感染症は通常のアウトブレイク環境外で発生する可能性、また MDRO 以外の菌株が関与する可能性がある。検出戦略の強化、内視鏡デザインの改善、およびより広範な使用後サーベイランスが、こうした隠れた伝播を予防するために必要である。
監訳者コメント:
十二指腸内視鏡の洗浄消毒は、機器の構造上の複雑性のためにどれだけ丁寧な洗浄が実施されていても、バイオフィルムができてしまうと洗浄消毒のプロセスが適切かつ有効に遂行できない。また、洗浄工程が常に適切に実施されているという保証はなく、その監視のために定期的に培養検査を実施するが、培養検査の感度にも限界があり、「培養陰性=安全」ではないことにも留意すべきである。本研究は、非 MDRO による内視鏡関連感染が過小評価されており、従来の「培養検査」による監視体制では不十分であること、また早期の検出が遅れる可能性が高いことが示された事例である。
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