多職種による抗菌薬適正使用支援プログラムがデンマークの大学病院におけるピペラシリン‐タゾバクタム使用に及ぼす影響:介入前後研究★★

2026.04.14

Impact of a multi-disciplinary antimicrobial stewardship programme on piperacillin—tazobactam use at a Danish university hospital: a before-and-after interventional study

J.G. Holler*, P. Printzlau, T.O. Jensen, O. Rezahosseini, C. Kraef, Z.B. Harboe, B. Lindegaard, L. Kolte, T.I. Pedersen, D.S. Hansen, C. Søborg
*Copenhagen University Hospital — North Zealand, Denmark

Journal of Hospital Infection (2026) 170, 81-91

背景

ピペラシリン‐タゾバクタムはデンマークの病院において、ガイドラインの制限があるにもかかわらず広く経験的使用が行われており、抗菌薬適正使用支援の重要な対象とされている。

目的

本研究の目的は、多職種による抗菌薬適正使用支援プログラムがデンマークの大学病院におけるピペラシリン‐タゾバクタムの使用、処方の質および臨床的安全性に関するアウトカムに及ぼす影響を評価することであった。

方法

2022 年 1 月から 2024 年 12 月にかけて、分割時系列分析を用いた前向き準実験研究ならびに 2 病院における点有病率調査(2021 年および 2023 年)を実施した。2023 年 1 月に導入した抗菌薬適正使用支援プログラムには、前向きの監査およびフィードバック、教育、ならびに病棟レベルの月ごとの報告を含めた。総入院日数 1,000 日当たり治療日数(DOT)により抗菌薬の使用傾向を評価した。ロジスティック回帰によりガイドライン遵守および処方の質の指標を解析した。Poisson 回帰により DOT の比例変化を評価した。

結果

入院 156,035 件中、92,346 件(59.2%)は抗菌薬適正使用支援を実施した病棟で発生した。ピペラシリン‐タゾバクタム使用は 19.5%(95%信頼区間[CI]-25.5 ~-13.5%)減少したが(P < 0.001)、抗菌薬適正使用支援の非実施病棟では 26.7%増加した(95%CI 18.6 ~ 34.9%、P < 0.001)。ベンジルペニシリン、アンピシリンおよびアミノグリコシド系薬の使用は、抗菌薬適正使用支援の実施病棟ではそれぞれ 14.2%、20.2%および36.4%増加した。点有病率調査の結果(N = 262)から、ガイドライン遵守(オッズ比[OR]2.32、95%CI 1.38 ~ 3.90)、適応の文書化(OR 3.06)、治療の計画(OR 9.83)および 72 時間以内の再評価(OR 2.52)に改善が示された。30 日再入院率は 11.6%から 10.2%に低下し(P = 0.0001)、他方で院内死亡率に変化はなかった(6.0% 対 6.1%、P = 0.962)。

結論

多職種からなる抗菌薬適正使用支援プログラムは、参加した病棟において、ピペラシリン‐タゾバクタム使用の減少ならびに処方の質の改善と関連し、安全性の指標における悪影響はなかった。これらの結果は、抗菌薬適正使用支援が抗菌薬使用を最適化するための効果的な戦略であることを支持している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

この論文の成果として、構造化された AMS プログラムが安全性を損なわずに TZP 使用を大幅削減できることを、3 年間の時系列解析で実証した点が挙げられる。また COM-B 行動変容モデル(能力、機会、動機の 3 つがそろったときに行動変容が起こる)を用いて AMS 導入障壁と促進因子を体系的に分析し、処方行動変容には技術的介入だけでなく組織的・行動科学的アプローチが不可欠であることを示した点も重要な知見である。すなわち、ガイドラインや教育だけでは行動変容は起こらず、フィードバック環境や相談環境、病棟での上層部の承認や AMS 推進者の配置などの恒常的な取組も必要となる。一方で、微生物学的アウトカム(耐性菌の発生動向など)との連携データが欠如しており、AMS 介入が耐性化抑制に貢献したかどうかを検証できていない。また、デンマーク国内でも約 45%の病院にしか正式な AMS 戦略がなく、体制整備の不均一性が今後の普及における障壁となっている点も重要な課題である。

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