スピードの必要性:最先端の病院微生物学検査室における超迅速高解像度アウトブレイク解析★★
The need for speed: ultra-rapid high-resolution outbreak analysis in a front-line hospital microbiology laboratory M. Bloomfield*, S. Bakker, M. Burton, K. Dyet, A. Eustace, S. Hutton, J. Jeram, D. Macartney-Coxson, D.J. Winter, R.T. White *Awanui Labs Wellington, New Zealand Journal of Hospital Infection (2026) 168, 48-57
背景
多くの病院検査室は、微生物の全ゲノムシークエンシングを実施する技術的能力はあるが、シークエンシングデータを解析するためのバイオインフォマティックスの専門能力を有していない。標準検査室に分離株を送ることは、アウトブレイク対応において極めて有害となりうる遅延を生み出す。Wellington Regional Hospital laboratory は、検査室内にバイオインフォマティクスの専門家がいないが、複数の病院アウトブレイクを早期に検出してきたナノポアベースのリアルタイム・ゲノムシークエンシングを導入した。この手法は検査室外で解析が必要で、数週間かかることが多い。クラウドベースの自動バイオインフォマティクス・プラットフォームである Solu Genomics は、バイオインフォマティクスやコマンドラインの専門能力を必要とせず、ベースコール処理を行ったシークエンスファイルやゲノムアセンブリを受け入れる。
目的
本研究の目的は、Solu Genomics を用いて、病院検査室のゲノムシークエンシングによって検出された以前の 2 件の新生児病棟アウトブレイクの解析を、あたかも両アウトブレイクが今発生したかのように再現し、その結果を「手動の」バイオインフォマティクス解析と比較した。
方法
各アウトブレイクの発生時までにシークエンシングが行われたサーベイランス分離株を Solu Genomics に読み込ませ、各アウトブレイクの発生時に利用可能であったゲノム背景データを再現した。次いで、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)13 株および Klebsiella variicola のアウトブレイク分離株 7 株のデータをアップロードした。
結果
アップロード時間を含め、Solu Genomics による各解析は 40 分未満で完了した。生成された系統樹から、アウトブレイク分離株に明確なクラスタリングが示され、系統樹のトポロジーは全体的に手動解析と類似していた。一塩基バリアントのペアワイズ距離の中央値は、MRSA アウトブレイクが 12(範囲:4 ~ 27)、K. variicola アウトブレイクが 6(範囲:1 ~ 11)であったのに対して、手動解析の場合はMRSA アウトブレイクが 6(範囲:0 ~ 14)、K. variicola アウトブレイクが 18(範囲:0 ~ 54)であった。
結論
Solu Genomics は、病院でよくみられる病原性細菌に対して、数分以内で高解像度の実行可能なアウトブレイク解析を提供し、従来のナノポアベースのシークエンシングから、院内でバイオインフォマティクスの能力がなくても感染予防・制御に容易に利用できる洞察が得られる。
監訳者コメント:
Solu Genomics は、クラウドベースの自動バイオインフォマティクス・プラットフォームで、以下の点で院内感染対策(IPC)を劇的に迅速化する。①解析時間の短縮、②バイオインフォマティクス専門家の不在を解消、③迅速かつ正確な意思決定の支援、④当日中の結果判明を実現、⑤リアルタイム監視への統合により、病院が自前でかつリアルタイムにデータ駆動型の感染症対策を行うことを可能にしている。しかしながら、専門知識がなくても操作できる一方で、系統樹などの解析結果を正しく解釈するには系統学のトレーニングを受けたスタッフが必要であり、結果を誤認すると、不適切な感染制御(IPC)措置につながる恐れもあるため、誤解釈を防ぐために解析結果を相談できる専門的施設の支援も必要である。
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