腰椎椎間板手術後のコラーゲンベースの癒着防止材と関連したEnterobacter kobei 感染症アウトブレイク:疫学および分子生物学研究★
Outbreak of Enterobacter kobei infections linked to a collagen-based adhesion barrier following lumbar disc surgery: an epidemiological and molecular study M.T. Ișik*, Y. Cezarğlu, F. Tomakin, M. Büyüktepe *Döșemealt i State Hospital, Turkey Journal of Hospital Infection (2026) 168, 114-120
背景
脊椎手術後の術後感染症は通常、皮膚細菌叢もしくは病院獲得病原体が原因である。本稿では、コラーゲンベースの癒着防止材に関連した Enterobacter kobei 感染症の新たなアウトブレイクを報告する。
目的
腰椎椎間板ヘルニアの手術において増加した手術部位感染症の感染源を同定すること、ならびにアウトブレイクに対して実施された調査および制御方策を記述すること。
方法
トルコの 2 次病院 1 施設において、多職種からなるアウトブレイク対策チームが疫学、環境および微生物学に関する調査を実施した。パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を用いた分子タイピングにより、分離株のクローン関連性を評価した。
結果
2023 年 5 月 19 日から 6 月 9 日の間に、腰椎椎間板ヘルニア手術を受けた患者 12 例中 10 例が手術部位感染症を発症した。環境培養検査は陰性であった。創、血液、およびコラーゲンベース癒着防止材の検体からエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)が分離された。国立公衆衛生検査室(National Public Health Laboratory)に送られた分離株は、E. kobei と同定された。PFGE 解析から、2 つの異なる、しかしクローン関連性のあるグループが明らかにされた。アウトブレイクは、癒着防止材の全国的なリコール後に制御された。
結論
この事象は、初めて報告された外科用癒着防止材と関連する E. kobei アウトブレイクとなる。この事象は、今後の同様のイベントを予防するために、滅菌されていない外科用材料に対する厳格な感染管理と綿密なモニタリングの必要性があることを強調している。
監訳者コメント :
本論文は、腰椎椎間板手術後の手術部位感染(SSI)がコラーゲン製癒着防止材に起因したことを示した、極めて重要なアウトブレイク報告である。しかも原因菌は比較的稀な Enterobacter kobei であった。
本報告の重要性は、癒着防止材が「滅菌済み」と想定される医療材料であるにもかかわらず、その前提が崩れた点にある。また、コラーゲンは細菌増殖に適した基質であり、体内に留置されることで感染が増幅した可能性がある。さらに、発症率が 83%という極めて高率であったことから、高菌量汚染の可能性も示唆される。
アウトブレイクは癒着防止材の全国的リコール後に終息しており、他の感染経路の関与は否定的と判断される。
本論文が示す重要なメッセージは、①SSI が急増した場合には使用材料も感染源として疑うべきであること(「滅菌済み製品」も絶対ではない)、②稀な菌種の集積は共通感染源の存在を示唆すること、③分子疫学的解析が原因特定における決定的証拠となり得ることである。
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