細菌の耐性制御における抗菌薬制限の役割:文献のシステマティックレビュー★

2020.02.29

Role of antimicrobial restrictions in bacterial resistance control: a systematic literature review
M. Chatzopoulou*, L. Reynolds
*University of London, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 125-136

 

背景
抗菌薬適正使用支援は、細菌の耐性制御の最も基本的な側面の一つと考えられている。多数のイニシアチブの中でも制限的な対策は病院環境で広く実施されている。しかし、その効果の可能性に関するデータの系統的な収集および評価はこれまで行われていない。

目的
病院環境での細菌の耐性化に対する制限的な方針の影響に関して、入手可能なエビデンスを特定・収集・評価すること。

方法
文献のシステマティックレビューを、PubMed/Medline、Embase、Global Health、CINAHL Plus のデータベースを用いて実施した。

結果
検索過程で計 5,555 件の論文を抽出し、29 件の研究を最終解析の対象とした。無作為化研究はなく、採用された観察的デザイン特有の限界が、安全な結論を導くことを妨げている。有益と思われる介入には、βラクタム系薬/ラクタマーゼ阻害薬の合剤を選択する方法での広域スペクトルのセファロスポリン系薬の制限、およびフルオロキノロン系薬の制限が含まれている。抗菌薬の制限は、バンコマイシン耐性腸球属菌制御の一翼を担う可能性もある一方で、エルタペネムの優先的使用という方法でのカルバペネム系薬管理は、期待される結果を示さなかった。情報価値のある比較分析には複雑な制限が課されていない。病院全体にわたる方針は、リスクの高い診療科に限定される方針よりも優れているかもしれない。カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は、単に規定の介入だけでは制御が難しいであろう。

結論
有効と推定される制限的な対策は、主に、不十分な試験の仮説および質の低いエビデンスによるものであった。したがって、この分野でもっとも有益な方針が採用されるように、質の高いシステマティック研究では、主題に関する理解を確認して展開する必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

抗菌薬の適正使用において、重症感染症の場合はどうしてもスペクトラム広く治療が開始されるが、細菌培養検査の結果がその後得られた場合には狭域スペクトラムへスイッチすることが可能な場合もある。このように、地道な抗菌薬の使い方はすべての臨床医が本来精通する必要がある。なぜなら、大規模病院では抗菌薬処方が必要となる患者はかなりの割合を占めているからである。

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