感染予防・制御(IPC)介入の強化により、集中治療室におけるカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)の定着および感染が減少:4 年間の後向き研究★★

2026.01.10

Enhanced infection prevention and control interventions decreased carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii colonization and infection in an intensive care unit: a 4-year retrospective study

B. Zhao*, Q. Wang, J. Lu, Y. Fu, D. Cui, J. He, Z. Zhai, Y. Ma, G. Li
*Tianjin Chest Hospital, China

Journal of Hospital Infection (2026) 167, 9-15

背景

カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)(CRAB)は、医療環境における世界的に重大な脅威であり、高い合併症率および死亡率と関連し、治療選択肢は限定的である。病院内における CRAB に対する効果的な予防および制御は、その伝播を抑制し、増大する抗菌薬耐性の危機を軽減する上で不可欠である。

目的

集中治療室(ICU)における CRAB の定着/感染を減少させるための感染予防・制御(IPC)の介入強化について検討した。

方法

2021 年から 2024 年に実施した本後向きコホート研究は、以下の 3 つのフェーズに分けられた:(1)ベースライン IPC 期間(2021 年 1 月から 12 月),(2)強化 IPC 介入期間(2022 年 1 月から 2023 年 3 月)(エアロゾル化過酸化水素による消毒および専任の IPC スタッフによる監督を組み込んだ)、(3)フォローアップ期間(2023 年 4 月から 2024 年 12 月)。CRAB の定着/感染率を各フェーズ間で比較した。

結果

全体で、ICU 患者 12,424 例について解析した(ベースライン期間 3,108 例、強化 IPC 期間 4,121 例、フォローアップ期間 5,195 例)。四半期毎のCRAB の定着/感染率は、ベースライン期間中の1,000 ICU 患者日当たり 13.57 症例から強化 IPC 介入期間後には 6.64 症例まで有意に低下し(P < 0.05)、フォローアップ期間にはさらに 1.42 症例まで有意に低下した(P < 0.05)。

結論

最終清掃の一環としての密閉室における無接触のエアロゾル化過酸化水素による消毒システムと専任 IPC スタッフによる監督を追加したことで、CRAB の定着/感染率が有意かつ持続的に低下する結果となった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

CRAB は ICU などの重症患者を治療する部署において感染対策上極めて重要な多剤耐性菌である。これまで、接触予防策と環境整備が主として行われてきたが、その効果は芳しくなく、環境での長期生存が持続的伝播を引き起こし、制御困難となっている。そこで、本論文ではエアロゾル化過酸化水素による最終環境消毒を導入し、専任職員を配置したところ、CRAB の定着・感染率は低下し、その効果は持続している。しかしながら、消毒効果の定量的評価や ATP などの清浄度評価、手指衛生遵守率などの客観的評価、さらには臨床株と環境株との遺伝的関連性の検証などがなされていないため、詳細な分析が困難であるが、新たな環境整備の方法として今後の展開が期待される。

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