SARS-CoV-2 の発生率が中程度および高い時期の病院でのうがい液のプール方式の PCR 検査★★
Gargle pool PCR testing in a hospital during medium and high SARS-CoV-2 incidence P. Kheiroddin*, V.D. Gaertner, P. Schöberl, E. Fischer, J. Niggel, P. Pagel, B.M.J. Lampl, A. Ambrosch, M. Kabesch *University Children’s Hospital Regensburg (KUNO), Germany Journal of Hospital Infection (2022) 127, 69-76
背景
脆弱な患者を保護するために、病院を重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)感染症から保護する必要がある。したがって、スタッフの標準的衛生措置およびワクチン接種に加えて、病院向けの安全で効率的、費用効果の高い SARS-CoV-2 検査システムが必要である。本稿では、中程度および高い発生率の時期の、プール方式のリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)検査システムの実現可能性および性能に関して報告する。
方法
検査室における PCR 検査前に、自宅でのうがいおよび病院でのサンプルのプールに基づいた検査コンセプトを実行した。病院環境での課題に適応し、オミクロン波で上昇する発生率に対応するため、2 種類の PCR システム(ポイント・オブ・ケアおよび 96 ウェルプレートシステム)を使用した。
結果
10 週の試験期間中に、697 件の プール方式の PCR(計 8,793件の検査)を実施し、プール方式の PCR によって 65 名の無症状のスタッフメンバーを特定し、陽性の個別の PCR によって 94 名の症状のあるスタッフメンバーを特定した。プール方式の検査によって検出されたスタッフのウイルス量は有意に少なかった(P < 0.001)。オミクロン波のピーク時でさえ、検査システムは有効なままであり、試験期間中に病院のいずれの特定の場所でもアウトブレイクは発生しなかった。ワクチン未接種者は高い検査陽性比率を示した(検査陽性の 37% vs 22%、P = 0.04)。検査手順は病院スタッフの大部分(84%)に広く受け入れられた。
結論
うがい液のプール方式の rRT-PCR 検査の反復は、感染率が非常に高い時期でさえ、病院内で迅速に実行可能かつ有効であり、病院にとって容易に適応可能であり良好に受け入れられる検査システムである。
監訳者コメント:
COVID-19 は無症状者が多く、飛沫やエアロゾルによる感染性により、学校や病院などの多くの人が集まる施設で感染拡大するため早期発見が必要であるが、検査の感度や特異度、頻度や検体採取時の侵襲性、そして検査コストを考慮した場合には、検体プールによるRT-PCR が比較的感度良く、低コストで検出可能である。本論文では「うがい液」によるプール検査を実施しているが、起床時に 6 mL 程度の水で 30 秒間うがいし、うがい液を試験管の中に入れ、そのうちの 2 mL をプール検査用に別の試験管に分け、これを 10 検体まとめて、RT-PCR による核酸増幅するという手順である。実施頻度は最低週 2 回としている。うがい液によるプール検体による検査は、早期に無症状陽性者を職場から引き離すことが可能であり、被験者にとっても侵襲性がなく受け入れ可能な早期発見のスクリーニング方法であり、抗原定性検査よりも感度が高いことも利点である。
同カテゴリの記事
Timing of last COVID-19 vaccine dose and SARS-CoV-2 breakthrough infections in fully (boosted) vaccinated healthcare personnel H.C. Maltezou*, M.N. Gamaletsou, T.V. Giannouchos, D-M. Koukou, A. Karapanou, F. Sourri, N. Syrimi, N. Lemonakis, E. Peskelidou, K. Papanastasiou, K. Souliotis, A. Lourida, P. Panagopoulos, D. Hatzigeorgiou, N.V. Sipsas *National Public Health Organization, Greece Journal of Hospital Infection (2023) 132, 46-51
Higher yield in duodenoscope cultures collected with addition of neutralizing agent J.A. Kwakman*, M.C. Vos, M.J. Bruno *Erasmus MC University Medical Centre, the Netherlands Journal of Hospital Infection (2023) 132, 28-35
Characterizing the molecular epidemiology of anaesthesia work area transmission of Staphylococcus aureus sequence type 5 R.W. Loftus*, C.T. Brindeiro, C.P. Loftus, J.R. Brown, J.E. Charnin, F. Dexter *University of Iowa, USA Journal of Hospital Infection (2024) 143, 186-194
Impact of carbapenem-targeted antimicrobial stewardship interventions: an interrupted time-series analysis H-J. Son*, S. Bae, K. Cho, I. Park, J. Kim, H. Han, E.O. Kim, J. Jung, S-H. Kim, S-O. Lee *University of Ulsan College of Medicine, South Korea Journal of Hospital Infection (2023) 140, 132-138
Comparison of the in-vitro efficacy of different mouthwash solutions targeting SARS-CoV-2 based on the European Standard EN 14476
K. Steinhauer*, T.L. Meister, D. Todt, A. Krawczyk, L. Paßvogel, B. Becker, D. Paulmann, B. Bischoff, S. Pfaender, F.H.H. Brill, E. Steinmann
*Schülke & Mayr GmbH, Germany
Journal of Hospital Infection (2021) 111, 180-183