グラウンデッドセオリーを用いた記述的レビューによるポイントオブユース水道水フィルターの本体の洗浄に関するエビデンスの評価

2025.10.05

A narrative review with grounded theory to evaluate the evidence for cleaning the filter body of point-of-use tap water filters

M. Clark*, R. Beattie, T. Inkster
*Antimicrobial Resistance and Healthcare Associated Infection Scotland, UK

Journal of Hospital Infection (2025) 164, 43-50

背景

ポイントオブユースフィルターは、水系病原体(緑膿菌[Pseudomonas aeruginos]など)が患者または給水設備から分離された水関連アウトブレイク/インシデントへの対応として、または免疫不全患者が治療を受けている高リスク区域(集中治療室、新生児病棟など)での予防措置として、病院内の蛇口/シャワー口に設置されている。

方法

この記述的レビューでは、これらのフィルター本体の外側の洗浄に関するエビデンスベースを検討し、グラウンデッドセオリーと標準的な記述的レビューの手法を組み合わせた独自のアプローチを用いる。限られたエビデンスベースから関連データを抽出するためには、このアプローチが必要であり適切であると考えられた。

結果

記述的レビューの過程で組入れの基準を満たした研究はなかった。しかし、グラウンデッドセオリーを組み込むことにより、文献中の主要テーマ 5 項目、すなわち逆行汚染、洗浄、維持管理/訓練、設備汚染およびフラッシュ洗浄/サンプル採取に関するエビデンスが得られた。

結論

これらのテーマは、各テーマに関するエビデンスを検討する物語構造を提示する。軸足コーディングでは、これらのテーマ間の関連性に関するエビデンスを探索する。行動への影響を取り上げ、現在の研究にみられる欠陥(例えば、臨床環境における複雑な一連の変数による交絡の重大なリスクなど)のエビデンスも取り上げる。このアプローチにより、フィルター本体の汚染に関連するリスクおよび考えられる要因が集約・定義され、洗浄に関する明確な疑問が提示されており、これらの疑問にはさらなる科学研究によって答えなければならない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

ポイントオブユース(point of point-of-use)蛇口フィルターの外部清掃に関する本ナラティブ・レビューは、質の高いエビデンスが皆無(N = 0)であるという重大な知識のギャップを突きつけた。緑膿菌等の水系病原体から患者を守る重要な感染対策機器であるにも関わらず、その維持管理の根幹に科学的根拠がないことは深刻な問題である。本レビューは「逆行性汚染」や「清掃プロセス自体による汚染」のリスクを指摘しており、清掃がリスクを減らすのか増やすのかすら未解明である。現場での運用と訓練の標準化に向け、清掃プロセス自体のリスクを検証する科学的研究が喫緊の課題である。

※グラウンデッドセオリー(grounded theory):社会学者のバーニー・グレイザーとアンセルム・ストラウスによって提唱された質的な社会調査の記載方法。

※ナラティブ・レビュー:特定の分野の先行研究を、著者の視点でまとめ、物語のように記述する総説論文の手法。

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