SpaCE 診断:熱傷創感染の臨床現場での迅速な検出を目的とする新たなポイント・オブ・ケア・センサーの精度を検討するパイロット研究

2020.12.31

The SPaCE diagnostic: a pilot study to test the accuracy of a novel point of care sensor for point of care detection of burn wound infection
A.E. Young*, N.T. Thet, J. Mercer-Chalmers, R.J. Greenwood, K. Coy, S. Booth, A. Sack, A.T.A. Jenkins
*University Hospital Bristol and Weston NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 726-733


背景
熱傷患者における創感染はよく見られるものであり、転帰に影響を及ぼす。臨床現場での迅速な(point of care;PoC)感染診断法で客観性のあるものはない。早期診断は敗血症への進行を防ぐ。診断上の主観性が過剰診断、不要な入院および抗菌薬の使い過ぎを後押ししている。
目的
本パイロット研究は熱傷患者における創感染の新たな PoC 診断の精度を検討することを目的とした。
方法
創感染の早期診断のために PoC 診断を作成し in vitro で検査した。SPaCE 診断の試作品は特許取得済みの脂質小胞懸濁液を使用し、その中へ臨床スワブを置く。本診断は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Candida 属菌およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)に対して毒素放出時に色応答を示す。臨床診断精度のパイロット試験を行った。参照基準は、専門家による臨床委員会がルーチンに入手可能なデータを用いて行った後向きの判定であった。
結果
データは患者 34 例中 33 例より入手できた。そのうち創感染を有していると考えられたのは 52%、有していないと考えられたのは 42%であり、2 例(6%)は不確かであった。診断結果より 24%は感染、42%は非感染、33%は中間的結果となったことが示された。重み付きκ係数を用いて評価した臨床判断と診断結果の一致は 0.591 であり、中等度の一致を示した。中間的結果を除外した場合、確定的結果を伴う 22 セットのデータはκ統計量 が 0.81 に達し、「ほぼ完全な」一致を示した。感度と特異度はそれぞれ57%(8/14)、71%(12/17)であった。
結論
本パイロット研究により、SPaCE 診断は創感染に対する臨床現場での迅速な臨床的意思決定を支援する有益でタイムリーなデータをもたらす可能性があるというエビデンスが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
熱傷患者の創傷部位に黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ属、E. faecalis が存在することをベッドサイドで判定できる機器の有用性に関する論文である。まだそれだけで確実な診断価値が期待できるものではなさそうだが、今後に期待したい。

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