中心静脈回路アクセスにおけるニードルレス・コネクターの除染方法:ランダム化対照試験★★
Decontamination methods of needleless connectors in central venous access: a randomized controlled trial Y.Y. Wu*, W. Ding, F.Q. Tao, Q.H. Deng, P.F. Wang, B.L. Feng *Zhongnan Hospital of Wuhan University, China Journal of Hospital Infection (2025) 162, 106-113
背景
ニードルレス・コネクターは中心静脈回路へのアクセスにとって不可欠であるが、汚染されていると血流感染症を引き起こす可能性がある。現在、ニードルレス・コネクターの最適な消毒薬および適用時間についての一貫したガイドラインがないため、看護実践の標準化が妨げられている。特に75%エタノールは、中国で広く用いられているが、2%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)エタノール溶液との厳密な比較がなく、既存のエビデンスは主に外来環境からではなく集中治療室からのものである。
目的
75%エタノールと 2%CHG エタノール溶液の有効性を、外来患者においてニードルレス・コネクターのスクラブ時間を 5、10、15 秒として比較すること。
方法
2 × 3 要因ランダム化臨床試験デザインを用いて、中心静脈アクセスを有する成人がん患者 111 例のニードルレス・コネクター 360 本を、6 つのプロトコールにランダムに割り付けた。すなわち、75%エタノールまたは 2%CHG エタノール溶液で、それぞれ 5、10、または 15 秒間スクラブした。ベースラインおよび除染後のサンプルを採取して微生物培養を行い、除染の有効性を評価した。
結果
ベースラインの汚染は、ニードルレス・コネクター 356 本の80.6%で発生しており、上腕静脈のカテーテル留置でリスクが高く(オッズ比[OR]3.12、95%信頼区間[CI]1.20 ~ 8.12)、長期間の留置(6 か月超)ではリスクが低下した(OR 0.25、95%CI 0.07 ~ 0.88)。75%エタノールと 2%CHG エタノール溶液の間で有意差は認められなかった(P > 0.05)。しかし 15 秒間のスクラブでは、5 秒間および 10 秒間のプロトコールと比べて優れた有効性が達成された(P = 0.024)。
結論
本研究では、消毒において 75%エタノールは 2%CHG エタノール溶液と同等であることが見出され、15 秒間以上のスクラブが支持されたが、残存汚染のリスクがあることが示された。消毒プロトコールを、外来患者集団および 75%エタノールを用いた実践に関連付けることで、本研究は多様な臨床環境においてスクラブ時間を標準化するため、また資源配分を最適化するための実施可能なエビデンスを提供している。
監訳者コメント:
ニードルレス・コネクター(NC)表面の汚染は、直接血流感染につながる可能性があり、アクセス時の丁寧な消毒は必須である。2 つの消毒方法では除菌結果に差が認められなかったことから、物理的に NC 表面を十分(少なくとも 15 秒)擦ることが必要であり、教育訓練による手技の徹底と実施状況のモニタリングは必要であろう。本論文ではアクセス前に 8 割で表面の細菌汚染が認められ、最も多い汚染菌種はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であったことから、使用されていない間の NC 表面の汚染防止も必要かもしれない。また、NC 表面の消毒は「丁寧にかつ物理的に十分な時間擦り消毒する」ことが大切であるが、NC 表面形状や機構の異なる様々な種類の NC が各社から市販されており、形状により有効な消毒方法は全く同じではないため、各メーカーの推奨する手技での消毒を予め確認するようにしたい。
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