OXA-181 カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による内視鏡関連アウトブレイクならびにその衛生管理における意味★★
Endoscope-associated outbreak of OXA-181-carbapenemase-producing Klebsiella pneumoniae and its implications for hygiene management J. Haak*, I. Klempien, J.B. Hans, S. Schaefer, K. Meyer-Bothling, S. Gatermann, E.E. Dirks, K. Konrat, M. Arvand *State Office for Health and Social Affairs Mecklenburge–Western Pomerania, Germany Journal of Hospital Infection (2025) 158, 19-28
目的
消化管内視鏡に関連したカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による大規模なアウトブレイクに関する疫学的、微生物学的および遺伝学的調査(感染制御介入を含む)について報告すること。
方法
再処理手順、再処理済み内視鏡の系統的微生物学的検査、古い内視鏡の交換、分解した内視鏡のチャネル検査、アウトブレイク株のバイオフィルムに対する消毒効果検査、ならびに全ゲノムシークエンシング(WGS)解析に対する内的および外的監査。
結果
アウトブレイクの早期段階において、アウトブレイク株が患者 19 例で検出され、このうち 16 例(84%)が消化管内視鏡処置を受けていた。アウトブレイク株は、再処理済み内視鏡からも分離された。WGS より分離株におけるクローンの近縁性が確認され、汚染された内視鏡を介した患者間の伝播が示唆された。再処理手順に対して監査を行い、古い内視鏡は新しいものと交換され、新しい内視鏡に対する系統的微生物学的検査が導入された。追跡調査では、アウトブレイク株が再処理後の新しい内視鏡で分離された。再監査から、再処理後に内視鏡チャネル内に湿気が残存していたことが明らかになった。分解した内視鏡の調査から、チャネル内に小さな付着物や傷があることが明らかになった。消毒効果検査から、アウトブレイク株のバイオフィルムは過酢酸に対する耐性を有することが明らかになった。アウトブレイク株が、患者 32 例および再処理済み内視鏡 2 本から分離された。WGSから、患者間伝播が今回のアウトブレイクの後期における伝播様式であることが示唆された。
結論
今回のアウトブレイクを封じ込めるには多段階の戦略が必要であった。顕微鏡分析では、内視鏡チャネル内におけるバイオフィルム形成の所見が示され、またアウトブレイク株のバイオフィルムは再処理に用いられる消毒薬に対する耐性を示した。本研究のデータは、感染制御実践における継続的な注意、ならびに内視鏡を対象とした再処理プロトコールの必要性を強調している。
監訳者コメント:
消化管の軟性内視鏡の洗浄消毒の難しさと洗浄消毒不良による院内感染の発生は以前からも問題視されている。しかしながら、根本的な解決策がない状況であり、内視鏡の細長い管腔を完璧に洗浄し、その後消毒することは難しい。また肺炎桿菌のバイオフィルムが消毒薬耐性を示したことは、内視鏡の内腔の材質や再処理・保管の方法さらに管理手順についても、解決すべき多くの課題を提供している。
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