ドレノーム:病棟シンクからの排水のメタゲノミクスを用いた縦断的特性解析により、マイクロバイオームおよびレジストームの特性を明らかにし、汚染除去介入の効果を評価する★★

2024.11.12

The drainome: longitudinal metagenomic characterization of wastewater from hospital ward sinks to characterize the microbiome and resistome and to assess the effects of decontamination interventions

L.B. Snell*, D. Prossomariti, A. Alcolea-Medina, M. Sasson, M. Dibbens, N. Al-Yaakoubi, G. Humayun, T. Charalampous, C. Alder, D. Ward, A. Maldonado-Barrueco, O. Abadioru, R. Batra, G. Nebbia, J.A. Otter, J.D. Edgeworth, S.D. Goldenberg
*King’s College, UK

Journal of Hospital Infection (2024) 153, 55-62


背景

病院の排水管および排水管と水との接触面は、病原体の院内伝播に関与している。メタゲノミクスにより、排水管における微生物の構成および抗微生物薬耐性の存在(「ドレノーム(drainome)」)を評価できるが、この手法を縦断的に適用して、感染制御介入の評価を試みた研究はない。

目的

ロングリード・メタゲノミクスを微生物学的測定と併用して、ドレノームを検討すること、また過酢酸含有汚染除去製剤の効果を評価すること。

方法

12 週間にわたる、ベースライン期、過酢酸を用いた強化汚染除去を行う介入期、ならびに介入後期の 3 期からなる研究。病院内の集中治療室にある 5 本のシンク排水管から週 2 回サンプル採取を行った。各サンプルについて、(1)総生菌数の測定、(2)メタゲノム解析として(i)細菌および真菌の分類学的分類、(ii)抗微生物薬耐性遺伝子の検出、(iii)プラスミドの同定など、ならびに(3)免疫クロマトグラフィーによる残留抗微生物薬の検出を実施した。

結果

介入期には、全体的に総生菌数には変化がなかった(+386 cfu/mL、SE 705P = 0.59)。介入期における微生物多様性には、小さいが有意な増加が認められ(シンプソンの多様度指数:-0.07、SE 0.03、P = 0.007)、この傾向は介入後には持続しなかった(-0.05、SE 0.03、P = 0.08)。介入は、シュードモナス(Pseudomonas)科の相対的な増加と関連した(18.3%から 40.5%(+22.2%)、SE 5.7%、P < 0.001)。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)はすべてのサンプルに認められ、NDM-カルバペネマーゼが 3 本の排水管のサンプル 6 個で検出された。残留抗微生物薬は、多くのサンプル(115 個中 31 個、27%)で検出され、このことから手洗い以外の活動にシンクが使用されていることが示唆される。

結論

メタゲノミクスとその他の測定法により、ドレノームの構成を明らかにすること、また汚染除去介入の有効性を評価することができる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

「ドレノーム(drainome)」は、drain(排水)と-ome(全体性をあらわす接尾辞)であり、したがって排水システムに存在する微生物群全体像を表す用語である。マイクロビオーム(microbiome)は微生物群像を、レジストーム(resistome)は耐性菌群像を指すものである。近年、手洗いシンクに定着している薬剤耐性菌が院内感染伝播の原因としてクローズアップされ、様々な対策が試みられているが決定的な方法がないのが現状である。シンクの排水管表面の微生物群をメタゲノム解析することで、排水管内の微生物の状況と消毒剤処理前後でのこれらの定着した菌叢の変化を評価することが可能となる。

※メタゲノミクス(Metagenomics)とは、環境サンプルから直接回収されたゲノム DNA を評価する微生物の研究分野である。

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