病院の水環境と抗菌薬の使用:カルバペネマーゼ産生セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)の院内アウトブレイクで重要な因子★★

2024.09.03

Hospital water environment and antibiotic use: key factors in a nosocomial outbreak of carbapenemase-producing Serratia marcescens

U.J. Kim*, S-M. Choi, M.J. Kim, S. Kim, S.U. Shin, S-R. Oh, J-W. Park, H.Y. Shin, Y.J. Kim, U.H. Lee, O-J. Choi, H-Y. Park, J-H. Shin, S.E. Kim, S-J. Kang, S.I. Jung, K-H. Park
*Chonnam National University Hospital, Republic of Korea

Journal of Hospital Infection (2024) 151, 69-78


背景

医療の水環境は、カルバペネム耐性菌のリザーバの可能性がある。

目的

水環境のリザーバとしての役割と、2 つの集中治療室(ICU)における肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)の長引いたアウトブレイクを抑えるために適用された感染制御策について報告すること。

方法

アウトブレイクは、3 次病院の ICU で、2020 年 10 月から 2021 年 7 月にかけて起こった。患者の接触者追跡調査と環境評価を網羅的に実施し、KPC 産生 S. marcescens 感染と関連する因子を特定するために、症例対照研究を実施した。分離株間の関連は、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)で評価した。抗菌薬の使用を解析した。

結果

アウトブレイクは、2 つの波から成っていて、合計で 30 例の KPC 産生 S. marcescens 感染患者が巻き込まれていた。多数の環境培養で、KPC 産生 S. marcescens が、ICU で共用するシンク、汚物処理室、共用トイレから検出された。持続的腎代替療法システムの廃棄物箱でも検出された。患者からの KPC 産生 S. marcescens 分離株と環境からの KPC 産生 S. marcescens 分離株の遺伝的類似性は、PFGE で確認した。30 例の後向きレビューで、持続的腎代替療法と抗菌薬の使用が、KPC 産生 S. marcescens 感染と関連していた(P < 0.05)ことが判明した。カルバペネム系の使用の増加が続いていた。特に、コリスチンの使用が 2019 年以降増加した。

結論

我々の研究は、持続的腎代替療法システムが、病院のその他の水環境とともに、耐性微生物の重大な感染源の可能性があることを証明していて、これらの領域で感染制御の実践を強化する必要があることをはっきりと示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

カルバペネム耐性菌の増加は世界的な脅威であり、病院の水環境の汚染が持続的なリザーバとなる。一旦定着した耐性菌の排除のための水環境の改善は、シンクなどの給排水システムの交換や定期的な配管の消毒など費用や労力がかかる。本アウトブレイクでは、接触予防策や環境消毒の再教育と手技の強化が計られたが、患者域にあるシンクは手洗いと同時に輸液や経管栄養剤の残液の廃棄にも使用されており、感染拡大の一因と推測される。さらに持続性腎代替療法後の廃液処理のシンク環境が汚染箇所にもなっていた。グラム陰性の耐性菌対策においては、抗菌薬適正使用も重要だが、水廻り環境の改善は感染の連鎖を断つうえで重要である。

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