長期ケア施設の高齢入居者の呼吸器感染症に対する抗菌薬使用:システマティックレビューとメタアナリシス

2023.01.06

Antibiotic use for respiratory tract infections among older adults living in long-term care facilities: a systematic review and meta-analysis

Y. Huang*, W.I. Wei, D.F. Correia, B.H.M. Ma, A. Tang, E.K. Yeoh, S.Y.S. Wong, M. Ip, K.O. Kwok
*The Chinese University of Hong Kong, China

Journal of Hospital Infection (2023) 131, 107-121


背景

長期ケア施設(LTCF)の高齢者の呼吸器感染症に対して抗菌薬がよく処方されており、これは抗菌薬耐性出現の一因となる。本研究の目的は、LTCF 入居者の呼吸器感染症に対する抗菌薬処方率を明らかにするとともに、世界保健機関が開発した AwaRe モニタリングツールにより抗菌薬消費パターンを分析することである。

方法

MEDLINE、EMBASE、CINAHL を用いて発端から 2022 年 3 月まで検索した。LTCF での呼吸器感染症に対する抗菌薬使用について報告した原著論文を本レビューの対象とした。Joanna Briggs Institute’s Critical Appraisal Checklist for Prevalence Data を用いて研究の質を評価した。統合推定値を算出するためにランダム効果メタ解析を用いた。呼吸器感染症の種類、国、および試験開始年別にサブグループ解析を実施した。

結果

論文計 47 報(50 件の研究が含まれる)を対象とした。抗菌薬処方率は、21.5% ~ 100%(統合推定値 69.8%、95%信頼区間 55.2% ~ 82.6%)であった。下気道感染症に対する抗菌薬処方率は、ウイルス性および一般的な呼吸器感染症に対する処方率よりも高かった。イタリアと比較して、フランス、米国、オランダは、下気道感染症に対する抗菌薬使用率が低かった。ウイルス性呼吸器感染症の一部は抗菌薬により治療され、その抗菌薬のすべてが Watch グループに属していた。Access グループの抗菌薬の使用率は、米国、オーストラリアと比較して、オランダ、ノルウェー、スイス、スロベニアで高かった。

結論

LTCF での呼吸器感染症に対する抗菌薬処方率は高く、AWaRe 抗菌薬使用パターンは、呼吸器感染症の種類と国によってさまざまであった。抗菌薬使用の改善には、協調的な取り組みが必要と考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

長期療養施設における呼吸器感染症に対する抗菌薬処方状況の国際比較。オランダや北欧では抗菌薬使用率が低いという話があるが…何はともあれ、日本(というかアジア)のデータがなくて残念。

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