英国におけるカルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の強化サーベイランスを目的とした電子報告システムの評価

2019.05.10

An evaluation of the electronic reporting system for the enhanced surveillance of carbapenemase- producing Gram-negative bacteria in England


D. Jermacane*, C.M. Coope, D. Ironmonger, P. Cleary, B. Muller-Pebody, R. Hope, S. Hopkins, R. Puleston, R. Freeman, K.L. Hopkins, A.P. Johnson, N. Woodford, I. Oliver
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 17-24
背景
2015 年 5 月、Public Health England は、カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の強化サーベイランスのための電子報告システムの利用を開始した。
目的
この評価の目的は、提供されるデータの採取、適時性、完全性を調査することと、システムの導入において可能性のある阻害因子および促進因子を調査することである。
方法
評価は、サーベイランスデータの後向き解析および電子報告システム使用者との半構造化面接から成る。
結果
電子報告システムによって、カルバペネム耐性の調査に回された微生物の割合は、実施から最初の 12 か月にかけて 35%から 73%に増加し、データの採取は英国の各地域において大きく異なった。強化されたデータ領域の完全性は、提出された分離株の 78%で不良であった。電子報告システムにより報告した確認検査の結果によると、日数の中央値は、地域サービスでは 1 日、英国の照会研究所では 9 日であり、この研究所ではカルバペネマーゼ陰性を確定するために、さらに表現型検査を実施している。電子報告システムの利用を阻害する因子として、システム維持管理・技術支援・開発に向けて指定された持続的なリソースがないこと、電子報告システムをいつ、どのように使用するか、また作業量に関して明確でないことが挙げられる。不完全なデータにより、英国におけるカルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の重要な危険因子や伝播経路について理解を深めることができなかった。
結論
英国において、電子報告システムは、カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の重要な危険因子に関する情報を収集しうる唯一のサーベイランスシステムであり、この蔓延の制御を図る公衆衛生対策のために情報を提供する。電子報告システムは、他のサーベイランスシステムよりも、カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌に関してはより多くの情報を取り込むが、目的とする健康上の利益を提供するために、強化されたデータの適時性および完全性について実質的な改善が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
国レベルの網羅的なカルバペネマーゼ産生グラム陰性菌の電子報告システムの活用は、実態把握を可能にし、改善策を練るのに重要な役割を果たす。

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