プライマリケアの利用がしやすい救急部での上気道感染症に対する抗菌薬の過剰処方の決定因子:定量分析★

2021.07.31

Determinants of antibiotic over-prescribing for upper respiratory tract infections in an emergency department with good primary care access: a quantitative analysis

Z. Huang*, Y. Weng, H. Ang, A. Chow
*Tan Tock Seng Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 71-76


背景

緊急性のない救急部の受診のうち上気道感染症が占める割合は最も高く、抗菌薬の不必要な使用につながっている。

 

目的

本研究では、シンガポールの多忙な成人救急部 1 カ所の若手医師 130 名における上気道感染症に対する抗菌薬処方の決定因子を理解することを目指した。

 

方法

リッカート尺度による 44 の項目は以前の定量分析を参照して開発し、続いて救急部の若手医師を対象とする匿名の横断調査を行った。データ解析は因子の削減および多変量ロジスティック回帰によって実施した。

 

結果

6 名中 1 名(16.9%)の医師は抗菌薬の高頻度の処方者(自己申告での上気道感染症患者に対する抗菌薬処方率> 30%)であった。医学教育を受けた場所および医師としての実務年数の補正後、救急部での抗菌薬過剰処方の認識(補正オッズ比[aOR]2.37、95%信頼区間[CI]1.15 ~ 4.86、P = 0.019)および救急部での抗菌薬処方実践の遵守の認識(aOR 2.10、95%CI 1.02 ~ 4.30、P = 0.043)は抗菌薬の高頻度の処方と正の関連を示した。対照的に、抗菌薬の高頻度の処方者は標準的な処方者よりも上気道感染症患者を対症療法的に治療および管理する傾向が 6.67 倍(95%CI 1.67 ~ 25.0、P =0.007)弱く、抗菌薬処方のために診断検査に依存する傾向が 7.12 倍(95%CI 1.28 ~ 39.66、P = 0.025)強かった。

 

結論

組織に関連する因子(組織の基準および文化)は救急部での単純性上気道感染症に対する抗菌薬処方実践の強い決定因子であった。他の寄与因子には診断の不確実性および知識の欠落が含まれた。施設の最良の実践基準のロールモデルを作ることと地域の疫学に基づいた臨床判断の支援ツールによって、救急部における抗菌薬処方を最適化できる可能性がある。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

日本でも上気道炎における抗菌薬の適正使用が問題になっている。個別の医師の裁量も重要であるが、それ以上に組織の基準や文化が重要な要素であるというのは、日本における抗菌薬適正使用を進める上でも、どこに重点を置いて進めていくべきかについて示唆を与える興味深い研究である。

 

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