従来型の N95 マスクとナノファイバー使用 N95 マスクの密着性と使いやすさに関する看護手順の前後における比較★★
Comparing mask fit and usability of traditional and nanofibre N95 filtering facepiece respirators before and after nursing procedures L.K.P. Suen*, Y.P. Guo, S.S.K. Ho, C.H. Au-Yeung, S.C. Lam *The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong Journal of Hospital Infection (2020) 104, 336-343
背景
N95 マスク の信頼性は正しい装着次第である。使用中の不快感はコンプライアンスに影響する可能性があるため、マスクの使いやすさの受け止め方も同様に重要である。看護手順中の体の動きも顔面の密封漏れのリスクを増やす可能性がある。
目的
最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクとナノファイバー使用 N95 マスクの密着性と使いやすさを看護手順の前後で評価すること。また、これらのマスクの物理的特性も検討した。
方法
本実験研究は 1 集団の多重比較の手法で行った。全体で 104 名の看護学生が参加し、最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクとナノファイバー使用 N95 マスクの装着時に 10 分間の看護手順を実施した。マスクの密着性と使いやすさの受け止め方を評価した。
結果
最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクの装着時は、ナノファイバー使用 N95 マスクの装着時と比較して、看護手順後に 100 以上のフィットファクターを得られなかった参加者がより多かった(33.7% vs 21.2%、P = 0.417)。また、顔面の温度、通気性、顔面への圧迫感、会話の明瞭度、かゆみ、マスクを適所に保つ難しさ、快適度の観点から、ナノファイバー使用 N95 マスクは最も良くフィットした 3M 社製のN95 マスクと比較して、より使いやすいことが明らかになった(P <0.001)。ナノファイバー使用 N95 マスクは、最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクと比較して、より軽く、より薄く、細菌ろ過効率も少し高かった。
結論
ナノファイバー使用 N95 マスクは、最も良くフィットした 3M 社製の N95 マスクと比較して、有意により使いやすいことが明らかになった。看護手順を実施後に顔面の密封漏れが検出されたように、使用者を一貫して防護できるマスクは存在しない。コンプライアンスを高め、使用者の呼吸保護を確実にするため、試作品のデザインのさらなる改良が必要である。
監訳者コメント:
N95マスクは結核などの空気感染する病原体の予防対策として、空気中の飛沫核の吸入防止のため着用するが、エアロゾルを発生させる可能性のある医療的手技においても装着が推奨されている。しかしながら、静止時のフィット性がどれだけ良くても、ケア中の装着者の身体や顔の動きにより、N95の密着性(フィット性)が低下し、漏れが生じることがこれまでもわかっている。密閉性の強化によりマスク自体が分厚くなり呼吸がしにくくなり、使用感が悪くなるのが従来のN95マスクである。超極細のナノファイバーで作成されたN95マスクとの比較では良好な結果が出ているものの、今後さらなる改良の余地は残されている。
同カテゴリの記事
Glove breach occurrence during surgical procedures: the benefits of double/indicator system gloves M.G. Rippon*, A.A. Rogers, K.J. Ousey *University of Huddersfield, UK Journal of Hospital Infection (2025) 161, 92-113
Plan-do-study-act cycles as an instrument for improvement of compliance with infection control measures in care of patients after cardiothoracic surgery
Airborne SARS-CoV-2 RNA excretion by patients with COVID-19 on different oxygen-delivery systems: a prospective observational study M.L. Janssen*, Y.P. Klazen, P. de Man, W. Hanselaar, D.S.Y. Ong, E.-J. Wils *Franciscus Gasthuis & Vlietland, the Netherlands Journal of Hospital Infection (2022) 123, 87-91
Bed bug infestation in a French university hospital: control strategy, financial impact and perspectives A. Gressier*, N. Galakhoff, P. Thuillier, V. Kerlan, V. Cogulet, M. Cosse, L. Daniel, M. Canevet, S. Cabon, A. Le Grand, R. Baron, P. Saliou *Brest Teaching Hospital, France Journal of Hospital Infection (2022) 126, 81-86
Tools and strategies for monitoring hospital environmental hygiene services S. Gastaldi*, D. Accorgi, F. D’Ancona *Istituto Superiore di Sanità, Italy Journal of Hospital Infection (2025) 159, 52-61
