中心静脈カテーテル血培養と末梢血培養の陽性化までの時間差は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による長期留置カテーテル由来敗血症を診断するのに不正確である★★
Differential time to positivity of central and peripheral blood cultures is inaccurate for the diagnosis of Staphylococcus aureus long-term catheter-related sepsis
H. Bouzidi*, A. Emirian, A. Marty, E. Chachaty, A. Laplanche, B. Gachot, F. Blot
*Gustave Roussy-Cancer Campus, France
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 192-199
目的
中心静脈カテーテルおよび末梢部位から同時に採取した血液培養の陽性化までの時間差は、カテーテルを抜去せずにカテーテル由来血流感染を診断するのに広く用いられている。しかし、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のような一部の病原体に対するこの手法の正確性は日常診療において議論されている。
方法
320 床のがん拠点病院において、6 年の間に、2箇所から同時に採取された一対の血液培養の中に、黄色ブドウ球菌陽性の血液培養検体が 1 つ以上あった患者のカルテを後向きに検討した。微生物学的データは前向きに収集された微生物検査室のデータベースから抽出した。カテーテル由来敗血症の診断を確立または否定するため、対象の 149 例の患者に関するデータを、陽性化までの絶対時間および時間差を知らされていない独立した医師が後向きにレビューした。データの欠損により 48 例のカルテは除外されたため、実際に分析された症例は 101 例であった。62 例は診断が確立され、15 例は否定され、残りの 24 例の診断は不確定であった。
結果
中心静脈カテーテル血および末梢血の両方の血液培養が陽性であった 64 例の患者に関して、黄色ブドウ球菌によるカテーテル由来血流感染患者の陽性化までの時間差は有意に大きかった(P < 0.02)。しかし偽陰性症例の多さが原因となり、黄色ブドウ球菌によるカテーテル由来血流感染の診断に関して標準的なカットオフ限界の 120 分は 100%の特異度を示したが、感度はわずか 42%であった。
結論
これらの結果から、陽性化までの時間差はその高い特異度にもかかわらず、黄色ブドウ球菌によるカテーテル由来血流感染を除外するのに信頼できない可能性が強く示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
黄色ブドウ球菌による血流感染は、血管カテーテル留置中にしばしば発生し、カテーテル抜去に加え、心内膜炎や遠隔感染巣の検索が必須である。末梢血培養陽性の時間とカテーテル血培養陽性の時間との差、すなわち血液培養陽性化の時間差(DPT)は、これまで 2時間以上(つまり、血液培養よりもカテ血培養が 2 時間以上早く陽性になる)あればカテーテル由来の血流感染(CRBSI)が強く疑われるとされてきたが、本論文ではこれまでのDPT の 2 時間ルールは、黄色ブドウ球菌においては「適用できない」としている。DPT が 2 時間以内でもカテーテル感染の可能性があり、カテーテル抜去も視野に入れる必要があると結論づけている。
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