看護師の情報への曝露パターンと季節性インフルエンザワクチン接種への影響

2017.12.25

Pattern of exposure to information and its impact on seasonal influenza vaccination uptake in nurses


E.K.H. Cheung*, S. Lee, S.S. Lee
*Prince of Wales Hospital, Hong Kong
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 376-383
背景
医療従事者の年 1 回のインフルエンザワクチンの接種率は様々であり、多くの国で最適以下のレベルにとどまっている。医療従事者はワクチン接種について多様な情報に曝露される場合が多いため、その曝露パターンが医療従事者の判断に影響を及ぼす可能性がある。これはさらなる検討に値する。
方法
冬の流行のピークを越えた 2016 年 2 月に、香港の准看護師に、匿名のオンライン調査への参加を依頼した。質問票には、人口統計学的データ、勤務の特性および経験、ワクチン接種歴、ならびにワクチン接種の判断の理由を含めた。情報の入手について、入手した情報の供給源、タイプおよび性質によって、受動的な情報曝露と能動的な情報探索の 2 つの行動カテゴリーを定義した。カイ二乗検定、Mann-Whitney の U 検定、およびロジスティック回帰により、ワクチン接種をした看護師としなかった看護師を比較した。
結果
全体で 1,177 件の有効回答を看護師から得た。回答者の年齢の中央値は 32 歳で、86%が女性であった。全体のワクチン接種率は 33%であった。職場、専門機関、およびソーシャルネットワークからの情報への受動的な曝露は、ワクチン接種の判断を予測しなかったが、マスメディアからの情報への受動的な曝露は接種の判断を予測した(オッズ比[OR] 1.78)。先輩に相談する(OR 2.46)、促進活動を組織する(OR 2.85)、および情報探索を行う(OR 2.43)といった能動的な情報探索は、ワクチン接種率が高いことと有意に関連した。能動的な情報探索では累積効果が認められた(OR 1.86)が、受動的な情報曝露では認められなかった。
結論
医療従事者に対する季節性インフルエンザワクチン接種の促進活動およびキャンペーンの現在のストラテジーは、ワクチン接種率の上昇に有効ではない可能性がある。情報探索行動に的を当てた対策が、代替的アプローチとなるかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
医療従事者のインフルエンザワクチン接種率を向上させる要素に関する研究である。本結果から、行動変容のきっかけとなるのはマスメディアの情報などの受動的な要素である一方で、それが持続するためには自らの情報収集などの能動的な要素が必要であることが分かる。ワクチンに限らず行動変容を得るための戦略を考える上でも興味深い研究である。

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