変態期間中のイエバエの幼虫および蛹によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)獲得と保持
Acquisition and retention of Clostridium difficile by Musca domestica larvae and pupae during metamorphosis
M.P. Davies*, M. Anderson, A.C. Hilton
*Killgerm Chemicals Ltd, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 410-414
背景
イエバエによるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の伝播が立証されており、病院環境において感染を拡散するその能力が明らかになっている。
目的
イエバエ幼虫がハエ成虫へとなる変態期間を通じて C. difficile を獲得し保持する能力を明らかにすること。
方法
糞便乳濁液中で幼虫を C. difficile の芽胞に曝露させ、その成虫への発育期間を通じて芽胞の保持および内在を明らかにするため虫体の外部および内部を調べた。
結果
幼虫の外部表面には C. difficile が認められ、平均コロニー形成単位(cfu)は 0 日目 21.56 +/‒ 5.76 cfu、2 日目 22.44 +/‒ 9.90 cfu、4 日目に 0.56 +/‒ 0.34 cfu に減少し、その後は C. difficile は分離されなかった。同一の幼虫には C. difficile の内在(体内)が認められ、平均 cfu は 0 日目 587.33 +/‒ 238.29 cfu、2 日目に 297.44 +/‒ 155.21 cfu に減少し、4 日目には 73.67 +/‒ 46.74 cfu へとさらに減少し、その後は C. difficile は分離されなかった。C. difficile の回収ゼロはイエバエ幼虫の蛹化と時期的に一致した。6 日目以降、すべての幼虫が蛹化し、いずれの蛹からも C. difficile は回収できなかった。ハエ成虫(12 日目に羽化)または空の蛹殻からは C. difficile は回収されなかった。
結論
C. difficile 芽胞は、幼虫により摂食中に容易に獲得され内在化されるが、成虫への発育期間を通じて保持されることはなかった。したがって、ハエ成虫は成虫として C. difficile 汚染を獲得する。C. difficile 芽胞に対するイエバエ幼虫およびその抽出物の潜在的抗菌作用にはさらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
イエバエ成虫が、病院環境下でC. difficile(CD)の運搬役となり、院内に拡げるという証拠が過去に報告されている。本論文ではイエバエの幼虫が CD を体内および体表面に持つかどうかという、これまでとは異なった視点からのアプローチである。結論は、幼虫のときに体内に持っていても、サナギになると消失するという新たな知見が得られるというもので、同時に CD の消失に関与する物質の存在が示唆され、新たな抗 CD 薬開発の可能性という点で興味ある論文である。
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