次亜塩素酸は、シプロフロキサシンおよびエタノールとの in vitro での比較で、抗バイオフィルム活性と細胞形態の維持を示す★
Hypochlorous acid demonstrates antibiofilm activity with preserved cellular morphology in an in-vitro comparison with ciprofloxacin and ethanol N. Daştan*, S. Sakarya *İzmir Buca Seyfi Demirsoy Training and Research Hospital, Turkey Journal of Hospital Infection (2026) 174, 239-245
背景
カテーテル関連血流感染症は、カテーテル内腔のバイオフィルム形成のために、依然として臨床的な課題になっている。従来の抗菌薬ロック療法やエタノールロック療法は、抗菌薬耐性、不十分な浸透性、および細胞毒性のために限界がある。それら療法に代わる候補として、抗菌特性を持つ強力な酸化剤である安定化次亜塩素酸が登場した。しかし、その安定化製剤は、好中球由来の短時間存在する次亜塩素酸とは異なっている。
目的
この研究の目的は、in vitro のカテーテルロックモデルにおいて、次亜塩素酸の抗バイオフィルム活性の効果および細胞毒性のプロファイルを、高用量シプロフロキサシンおよびエタノールと比較評価することであった。
方法
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 35556)のバイオフィルムをカテーテルの断片上に形成させた。処理の効果を、クリスタルバイオレット染色と走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、4 日間にわたって評価した。次亜塩素酸とエタノールは、最小殺菌濃度で使用し、シプロフロキサシンは、抗菌薬への高レベルの曝露に相当するように最小発育阻止濃度の 500 倍で使用した。細胞毒性は、ギムザ染色した末梢血の塗抹標本の形態学的解析により評価した。
結果
次亜塩素酸とエタノールは、バイオフィルムのバイオマスを滅菌対照と同等のレベルまで減少させた。シプロフロキサシンは、バイオフィルムのバイオマスを有意に減少させることができず、バイオマスの増加と関連していた。SEM では、次亜塩素酸への曝露後バイオフィルムの構造が顕著に崩壊していることが確認された。形態学的に、エタノールは赤血球の溶解を引き起こし、シプロフロキサシンは連銭形成を促進した。一方で、次亜塩素酸は、細胞形態を維持し、細胞傷害の明白な形態学的エビデンスは認められなかった。
結論
安定化次亜塩素酸は、かなりの抗バイオフィルム活性を示した一方で、試験条件下において細胞形態を維持した。これらの研究結果は、次亜塩素酸がカテーテル関連感染予防策の有望な候補である可能性を示唆しているが、機能的な細胞毒性試験を組み込んださらなる研究が必要である。
監訳者コメント:
長期留置カテーテルでは、カテーテルを温存しながら感染を予防・治療する必要がある場面があり、耐性菌選択圧が低く、バイオフィルムに有効で、生体適合性に優れたロック液の開発が期待されている。本研究では、カテーテル内腔に形成されるバイオフィルムに対し、安定化次亜塩素酸(HOCl)が抗菌薬やエタノールに代わるロック液となり得るかを in vitro で検討した。その結果、安定化 HOCl は優れた抗バイオフィルム作用を示す一方、細胞形態への影響は少なく、新たなカテーテルロック液となる可能性が示された。ただし、現時点では基礎研究段階であり、臨床応用にはさらなる安全性・有効性の検証が必要である。
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