流し台の飛沫ゾーンで増殖するもの★
What grows in the sink splash zone M.I. Garvey*, R.A. Moran, M.A.C. Wilkinson, A.D.S. Ferreira, A. Gardiner, E. Holden, A. McNally *University of Birmingham, Edgbaston, UK Journal of Hospital Infection (2026) 173, 220-224
背景
病院の洗面台の排水口に存在する微生物叢には、日和見病原体や薬剤耐性遺伝子が潜んでいる可能性がある。患者は、蛇口や洗面台の排水口を介して、水媒介性病原体に曝露される恐れがある。我々は以前、臨床用手洗場の水が、洗面台や蛇口から最大 2 m 離れた場所まで飛沫する可能性があることを示した。本研究では飛沫ゾーン内の環境サンプリングからどの微生物が培養可能かを特定することを目的とした。
方法
バーミンガムのクイーン・エリザベス病院(QEHB)は、英国の大規模な 3 次医療病院である。我々は、集中治療室の臨床用手洗い場の蛇口から約 1 m 離れた飛沫ゾーンに SAS Super 180 空気サンプリング装置を設置し、蛇口を出水させている場合と出水させていない場合の両条件でサンプリングを行った。全でのグラム陰性菌を培養し、分離されたカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)については全ゲノムシーケンスを行った。
結果
蛇口から水が出ている状態で採取した環境検体からは、多様な微生物が検出され、グラム陰性の分離株には、シトロバクター・フレウンディー(Citrobacter freundii)、エンテロバクター・コベイ(Enterobacter kobei)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、 エンテロバクター・アスブリアエ(Enterobacter asburiae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、スフィンゴバクテリウム・マルチボラム(Sphingobacterium multivorum)が含まれていた。これらのうち、blaKPC-2 遺伝子を有するプラスミド性 CPE である、C. freundii 分離株 QE-SINK-CF1 を同定した。このプラスミドの構造変異は、QEHB における臨床感染症に関与していることが報告されている。蛇口を流していない状態での対照サンプリングではグラム陰性菌は検出されなかった。
結論
本研究では CPE を含む多様なグラム陰性菌が、洗面台から 2 m以内の飛沫到達範囲から培養可能であることを示した。この最新の知見は、医療現場において飛沫到達範囲と水媒介性病原体の伝播リスクを考慮すべきであることの更なるエビデンスを提供している。
監訳者コメント :
排水系が院内感染の環境レゼルボアになり得ることを示す研究結果で、シンクから 2 m以内への患者に使用する物品を放置することは避けることが望ましいという結果であった。英国と日本では、排水口や蛇口の構造・水質消毒方式が異なるため本結果をそのまま日本の医療機関の運用に置き換えることはできない。現時点では、各施設で実測に基づくリスク評価を行うことになる。
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