集中治療室(ICU)における多剤耐性病原体(MDRO)を予防するための複数レベルでの看護師長のリーダーシップを検討する:BRIDGE_IPC の枠組みを構築するための多施設共同グラウンデッドセオリーアプローチ★
Exploring head nurse leadership at multiple levels to prevent MDROs in ICUs: a multi-centre grounded theory approach to create the BRIDGE_IPC framework E. Cappelli*, J. Fiorini, L. Livigni, C. Ferrari, M. Azzolini, A. Sili, F. Canzan *University of Verona, Italy Journal of Hospital Infection (2026) 174, 101-115
背景
集中治療室(ICU)における多剤耐性病原体(MDRO)に起因する医療関連感染症の管理は、重要な課題である。感染予防・制御(IPC)実践は、リスクを低減するために不可欠であるが、インフラの違いや行動障壁によってそれらの効果は制限される場合が多い。これらの障害を克服し、有効な経路を促進し、患者アウトカムを改善するためには、看護師長のリーダーシップが極めて重要である。
方法
グラウンデッドセオリーアプローチを用いて、2 施設の病院の看護師長、看護師、看護助手および医師を含む専門職 34 名の経験から、理論的枠組みを構築した。参加者は理論的サンプリングによって選択した。データは非参加者の観察および半構造化面接によって収集し、一定の比較法を用いて解析した。
結果
有効な MDRO 管理は、複数の組織レベルで作用する看護師長のリーダーシップによって大いに方向づけられる。「安全な組織の構築」、「柔軟で状況に応じた戦略による先導」、「関係のダイナミクスによる相互信頼の促進」、「専門的行動の調節」という 4 つのテーマが浮上した。これらのテーマを BRIDGE-IPC の枠組み(Behavioural oRganIsation Dynamics for Governance and lEadership in Infection Prevention and Control)の参考としし、マクロレベルの指針、メソレベルのリーダーシップおよびミクロレベルのチームを、個々の行動と結び付けた。この枠組みは、看護師長が「機会の展望(landscape of opportunities)」内で、個々の知識を、共有される確固たる IPC 実践に変える方法を強調する。
結論
ICU における複数レベルでの看護師長のリーダーシップは、専門的能力と個々の特性(後進指導、影響が大きい、柔軟性、頼もしさまたは寛大さがある)を統合することによって、MDRO 管理を形作る。看護師長は、システムの仲介役および関係のまとめ役として行動し、「仮想知識ブリッジ」を築くことで暗黙の知識交換を促進し、適応行為をサポートし、チームの意欲を維持する。IPC を中核的価値として吸収することで、看護師長は信頼できるロールモデルとなり、スタッフの関与と遵守を強化し、患者安全性を向上させ、トレーニングおよび指針への介入を構想することができる。
監訳者コメント:
ICU での多剤耐性菌対策を、看護師長のリーダーシップという視点から捉えた質的研究である。重要なのは、手指衛生、PPE、環境整備、デバイス管理などの手順を知っているだけでは実践は定着せず、看護師長が現場と病院組織をつなぎ、職種間の調整、教育、監査とフィードバック、業務負荷への対応を行うことで、個人の知識がチームの行動に変わるという点である。感染管理認定看護師がすべてを直接指導するのではなく、各部署の看護管理者を感染対策の実装者として巻き込むことの重要性がよく分かる。ただし 2 病院 34 名の質的研究で、感染率低下などの効果を直接示したものではなく、夜間勤務の実態も観察されていない。それでも、遵守不良を個人の問題として指導する前に、管理者の支援、チーム内の関係性、業務設計まで見直すという視点は、日常の感染管理に取り入れやすい。
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