中心静脈カテーテル留置患者のための安全性のスキルに関するコンセンサス:修正デルファイ法★
Consensus on safety skills for patients with central venous catheters: a modified Delphi method M. Ravot*, A. Lazberg, G. Birgand, D. Seytre, A. Lomont, S. Kerneis, J-R. Zahar, L. Foucault-Fruchard *Assistance Publique des Hôpitaux de Paris, France Journal of Hospital Infection (2026) 171, 43-52
背景
中心静脈カテーテル(CVC)は広く用いられており、感染症や血栓症などの合併症につながる可能性がある。これらの合併症は、入院の長期化や医療費の増加をもたらし得る。患者教育が効果的であることがこれまでに示されているが、CVC 留置患者に対して実施されている統一的な能力評価の枠組みはまだ確立されていない。
方法
本研究では修正デルファイ法を用いて、外来環境の CVC 留置患者が教育介入によって獲得すべきスキルに関するコンセンサスを得た。専門家パネルに提出した初回質問票は、予備的な非系統的な文献レビューに基づき、全般的情報、日常生活、およびケアという 3 項目にカテゴリー分けされた 12 のコンピテンシーが含まれた。最終的に、すべてのコンピテンシーを世界保健機関のガイドライン、すなわち CVC に関する知識、患者の状態に対する自己管理のスキルおよび自信に基づいてカテゴリー分けした。
結果
専門家 62 名が参加した 2 回のラウンド後、22 のコンピテンシーについてコンセンサスに達した。面接を受けた医療専門家 1 名は、CVC 挿入を含む医療ケアを以前に受けていた。それらのコンピテンシーのうち、15 では高いレベルのコンセンサス(≧ 90%)が得られた。1 回目のラウンドでは、専門家全員が 3 つの主要なコンピテンシーについて妥当性を検証した。一部のコンピテンシー、例えば CVC コネクタの識別などは、患者にとって情報過剰負担のリスクの可能性があるため、議論の余地があることが示された。一部の専門家はまた、患者とケア提供者の間の信頼関係を損なう可能性があることを恐れて、患者に対して末梢挿入式中心静脈カテーテルの維持管理に関する不遵守を医療提供者に報告するよう教育することについて懸念を表明した。
結論
いくつかの限界があるにもかかわらず、本研究で作成したコンピテンシーの枠組みは、CVC に関係する合併症を低減することを目的とした教育介入のための基準として用いることができる。
監訳者コメント :
近年、患者参加型医療の重要性が強調されている。本研究は、中心静脈カテーテル(central venous catheter;CVC)を留置した患者が、安全なカテーテル管理のために習得すべき知識や技能について、専門家の合意形成により明らかにしたものである。
日本においても、PICC、CV ポート、長期留置型 CVC の在宅利用が増加している一方で、患者教育の内容や方法には施設間でばらつきがあり、「患者に何をどこまで教えるべきか」が必ずしも明確ではない。また、本研究は、患者を単なる教育対象ではなく、CVC 関連感染予防を担うパートナーとして位置付けている点に大きな意義がある。
感染対策担当者にとっては、患者教育の標準化を進めるうえで有用な知見といえる。例えば、退院指導や在宅療養への移行時において、発熱時の対応、挿入部の観察方法、ドレッシング異常の確認、緊急時の連絡方法などを必須教育項目として整理し、チェックリスト化する際の参考となる。
※Delphi 法:同じ複数の対象者に対し同一内容の質問を複数回繰り返し行い、意見集約をはかる研究手法
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