社会ネットワーク分析が情報を提供した手術室の手指衛生のためのピアチャンピオン:クラスター無作為化対照試験
Social network analysis—informed peer champions for hand hygiene in the operating room: a cluster randomised controlled trial L. Ye*, X. Jia, C. Zhengyuan, Y. Dan, Z. Jinjing, W. Nana *Nanjing University, China Journal of Hospital Infection (2026) 171, 113-119
背景
手術室看護師の手指衛生遵守率が最適ではないことは、手術部位感染症(SSI)の一因となる。従来の介入策は、持続可能性が欠けていることが多い。本研究では、社会ネットワーク分析を活用し、キーインフルエンサー(影響力のある人物)を巻き込んで手指衛生遵守率を向上させる介入を評価した。
方法
中国の南京にある病院の 2 つの分院(手術室看護師が 86 名)で、12 か月間のクラスター無作為化対照試験を実施した。介入分院では、社会ネットワーク分析が情報を提供した戦略が使われ、対照では、標準的な教育を受けた。専門家の助言を求めるネットワーク内の入次数中心性と媒介中心性を重み付けすることによって特定した 6 名のキーインフルエンサーを、ベストプラクティスをモデル化するためのピアチャンピオンとして訓練した。主要転帰は、ベースライン、3、6、12 か月における手指衛生の遵守率(秘匿観察)とした。副次的転帰は、SSI 発生率や、チームの雰囲気等とした。
結果
ベースラインの手指衛生の遵守は、2 つの群で同程度であった(41.8%対 42.6%、P = 0.62)。特定されたキーインフルエンサーの中心性スコアは、ネットワークの平均より 2.4 倍高かった。12 か月の時点で、介入群の手指衛生の遵守は、79.2%まで増加し(+37.4%)、対照では59.3%(+16.7%)であった。混合効果モデルで、群 × 時間の有意な交互作用(P < 0.001)が確認された。介入は、SSI 発生率の減少と関連があり(1,000 件の手術当たり 1.3 対 2.2、43.2%の相対的な減少)、看護師の知識スコアおよびチームの雰囲気スコアも有意に改善した(P < 0.01)。
結論
社会ネットワーク分析で特定したキーインフルエンサーを標的とした介入は、手術室の看護師による手指衛生の遵守を持続させるのに高い効果がある戦略である。この精密な手法は、伝統的な感染制御プログラムに代わる資源効率の良い選択肢となる。
監訳者コメント:
本研究は、全員一律の集合教育ではなく、職場内ネットワークで影響力を持つ少数のキーパーソンを特定し育成することで、手指衛生遵守率を 2 倍近くまで高め、SSI を 43%削減できることを示した論文である。日本でも人材不足である中で、ピアチャンピオンを配置し育成することが今後の感染対策向上に寄与できる可能性を秘めているかもしれない。
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