マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)に汚染された LivaNova 3T ヒータークーラー装置に対する水回路消毒デバイスのシミュレーション使用:マイコバクテリアおよび細菌に対するサーベイランスの結果★★
Simulated use of the water circuit disinfection device on a Mycobacterium chimaera—contaminated LivaNova 3T Heater Cooler Device: results of mycobacterial and bacterial surveillance C. Reiber*, T. Aigner, B. Chakrakodi, M. Dunic, S. Ernst, M. Pfister,A. Klapproth, K. van Tilburg, F. Imkamp, B. Schulthess, P. Sander, S.D. Brugger, H. Rodriguez, O. Dzemali, W. Zingg, P.W. Schreiber *University Hospital Zurich, Switzerland Journal of Hospital Infection (2026) 169, 93-97
背景
マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)により汚染されたヒータークーラー装置は、心臓手術後の抗酸菌感染症と関連付けられている。手術時にヒータークーラー装置内で汚染された水から発生する感染性のエアロゾルは、M. chimaera を伝播する可能性がある。水回路消毒デバイスは、電気分解により消毒物質を発生させる新規手法である。水回路消毒デバイスを、新品または使用済みの LivaNova 3T ヒータークーラー装置と併用した、製造者による徹底的な洗浄後には、ヒータークーラー装置が抗酸菌汚染なしに維持されることがこれまでに報告されている。水回路消毒デバイスの使用済み LivaNova 3T ヒータークーラー装置との併用についてのデータは不足している。
方法
以前に M. chimaera に汚染された使用済みの LivaNova 3T ヒータークーラー装置に水回路消毒デバイスを取り付け、8 か月にわたりその使用をシミュレーションした。2 週間ごとに 20 mL および 50 mLの水サンプルを、それぞれ細菌および抗酸菌の培養を行い分析した。研究期間中に同定された細菌および抗酸菌を分析し、水回路消毒デバイスの導入前後における抗酸菌検出の割合を比較した。
結果
8 か月の研究期間中に、水サンプル 30 個中 21 個(70.0%)で M. chimaera が回収され、その他の抗酸菌種は検出されなかった。臨床使用されていた同じ ヒータークーラー装置では、先行する 8 か月間に水サンプル 17 個中 12 個(70.6%)で抗酸菌が回収されたのに対し、陽性サンプルの割合に差はなかった(P = 1.00)。研究期間中に微生物学的分析に供するために採取されたサンプル 36 個において、21 個(58.3%)で細菌が回収され、多かったのはスフィンゴモナス(Sphingomonas)属菌(10 個、27.8%)および Cupriavidus pauculus(4 個、11.1%)であった。
結論
水回路消毒デバイスを汚染された LivaNova 3T ヒータークーラー装置に併用しても、抗酸菌汚染に有意な変化は認められなかった。
監訳者コメント:
Mycobacterium chimaera 感染症は、心臓手術後に発生する重篤な院内感染として問題となった。その原因の一つが LivaNova 3T Heater-Cooler Device であり、この装置では内部の水の汚染がエアロゾルとして拡散し、手術野に到達することが感染経路とされている。
本研究では、新たな対策として水回路消毒デバイスを用い、既に汚染された装置に対してその有効性、すなわち「汚染を除去できるか」を検証した。その結果、M. chimaera の検出頻度は導入前後でいずれも約 70%と変化は認められず、有効性は示されなかった。
その要因として、バイオフィルムの存在(消毒薬に対する抵抗性が高く、配管内部に固着する)や、抗酸菌の特性(消毒薬抵抗性が高く、増殖は遅いものの持続的に残存する)が考えられる。新技術の有効性を示す研究が多い中で、本研究はその限界を示した点に意義がある。すなわち、「装置を抗酸菌に汚染させない」という予防の重要性を強調する結果である。
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