ノルウェーにおける全国規模の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)アウトブレイクの分子疫学から高リスククローン ST244 を含む複数の異なるクラスターが明らかに★

2026.02.23

Molecular epidemiology of a nationwide Pseudomonas aeruginosa outbreak in Norway reveals multiple distinct clusters, including high-risk clone ST244

T. Pedersen*, A. Hesselberg Løvestad, A. Ingebretsen, D.H. Skutlaberg, C.G. Ås, A. Blomfeldt, The Pseudomonas Study Group
*University Hospital of North Norway, Norway

Journal of Hospital Infection (2026) 168, 70-79

背景

2021 年から 2022 年にノルウェーの病院 40 施設において約 400 例の患者で発生した野生型緑膿菌 ST3875 によるアウトブレイク中に、全国規模で収集された緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)菌血症分離株を集めた。

目的

多施設後向き研究により、ノルウェーにおける緑膿菌の分子疫学を調べること。

方法

18 か月間にわたり収集された利用可能な全分離株を、微生物検査室 20 室から抽出し、大学病院 5 施設で全ゲノムシークエンシングを実施した。人口統計学データ、サンプリングデータおよび地域を含むメタデータを整理した。系統樹解析および比較ゲノム解析を実施し、配列タイプ(ST)、クラスター、耐性決定因子、および病原性因子を同定した。

結果

本研究には、病院 33 施設から緑膿菌による菌血症患者 376 例を組み入れ(69%が男性、年齢中央値 76 歳)、国内の対象地域の 90%超が代表されていた。発生率には地域によってばらつきがあった(100,000 人当たり 5.1 ~ 16.3)。分離株 362 株について ST が解明され、164 の ST が明らかになった。世界的な高リスククローンおよび流行クローン(例、ST233、ST244、ST277、ST298、ST308)が、収集された分離株の 30%を占めていた。分離株の中で、カルバペネマーゼまたは基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を保有するものはなかった。アウトブレイククローン ST3875(N = 56)以外に、複数の病院および地域にまたがって、認識されていない 9 つの系統樹クラスター(それぞれ 2 ~ 20 症例)が同定され、これには病原性を決定すると推定される新規ゲノムアイランドを保有する、広範に認められるクラスター ST244が含まれ、このことから拡散における選択性の利点が示される。

結論

本包括的ゲノムサーベイランス研究から、ノルウェーにおける緑膿菌による菌血症の複数の予期しないクラスターの存在とともに、感受性株による流行クローンの広範な存在が明らかになった。シークエンシングと疫学データを統合したマルチレベルサーベイランスのルーチン実施により、高リスクの新興クローンおよびアウトブレイクの早期認識が可能になり、これにより感染予防の取り組みが強化される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

非滅菌の湿潤ワイプ(洗浄用クロス)を感染源とする全国規模アウトブレイク(ST3875)が発生し、40 病院で約 4,000 人に影響を与えた。本研究は、この原因菌であるPseudomonas aeruginosa 菌血症の全国規模アウトブレイクを対象に、全ゲノム解析を用いて分子疫学的解析を行ったものである。既知の ST3875 アウトブレイクに加え、ST244 など複数の未確認クラスターが存在することが明らかとなり、院内外での潜在的伝播の可能性が示唆された。耐性遺伝子は少ないものの、高リスククローンの広範な存在や新規病原性アイランドの関与が示され、耐性遺伝子がなくても病原性因子がクローン拡大に寄与した可能性が示唆され、WGS と疫学情報を統合したサーベイランスの重要性を示す研究である。

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