ドイツにおけるエムポックスウイルス・クレード Ibによる院内の環境表面および空気の汚染★

2026.02.23

In-hospital environmental surface and air contamination by monkeypox virus clade Ib in Germany

A.F. Wendel*, F. Mattner, D. Peter, M. Krakau , H. Gruell, A. Nitsche, J. Michel
*Witten/Herdecke University, Germany

Journal of Hospital Infection (2026) 168, 64-69

背景

エムポックスはエムポックスウイルスによって引き起こされ、ヒトからヒトへの感染により世界的に差し迫った公衆衛生上の懸念である。新興のエムポックスウイルス・クレード Ib は、これまで欧州で散発症例が報告されているのみである。

目的

環境汚染ならびに間接または空気伝播の可能性を評価するため、空気感染隔離病室においてドイツで初のエムポックスウイルス・クレード Ib 輸入症例の入院中に縦断的な環境サンプリングを実施した。

方法

8 日間にわたり、清掃後 6 時間以降に前室、病室およびトイレにおいて標準化された連続 6 回のサンプリングを行った。接触頻度の高い区域と低い区域におけるスワブサンプルならびに空気サンプル(コリオリスμインピンジャー)を採取した。さらに、排気 HEPA フィルターおよび携帯用空気清浄機フィルターについても分析した。エムポックスウイルスによる汚染は PCR により測定し、その後にウイルス培養を行った。

結果

エムポックスウイルス DNA による表面および空気汚染が、接触頻度の高い区域と低い区域、ならびに患者の近傍および遠隔区域で検出された(PCR 陽性率:表面サンプル 100 個中 92 個、空気サンプル 12 個中 11 個)。さらに、分析した空気フィルターおよび付着したゴミもエムポックスウイルス DNA について検査陽性であった。しかし、複製能を有するウイルスは、サンプリング第 1 日目のトイレの便座表面でのみ検出された。

結論

本研究のデータから、患者環境におけるエムポックスウイルス DNA による高度の汚染が示され、感染媒介物となる可能性が示唆される。広範な DNA 汚染と実際の伝播リスクとの関係は、依然として評価が難しく、さらなる研究が必要である一方、本研究の結果は環境の清掃および消毒の重要性を強調している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本研究は、mpox clade Ib 患者入院中の病室環境におけるウイルス汚染を系統的に評価した点で重要である。環境表面および空気中から高頻度に MPXV DNA が検出され、広範な環境汚染の可能性が示唆され、これは過去の clade Ⅱ と類似している。一方で、培養可能な感染性ウイルスは初回採取時のトイレ座面のみで確認され、PCR 陽性が必ずしも感染性を意味しないことが示された。環境清掃と PPE 着用の重要性を支持する結果であるが、実際の感染リスク評価にはさらなる疫学研究が必要である。

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