腸球菌属(Enterococcus spp.)の乾燥表面バイオフィルム形成能:環境表面における持続性への経路★★

2026.01.10

Enterococcus spp. ability to form a dry surface biofilm: a route to persistence on environmental surfaces

R. Harsent*, V. Cattoir, M. Pascoe, F. Pertusati, A.C. Westwell, J-Y. Maillard
*Cardiff University, UK

Journal of Hospital Infection (2026) 167, 23-33

背景

医療関連感染症は世界規模で重大な負担となっており、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの耐性病原体が特に懸念されている。乾燥表面バイオフィルムは、医療環境における多剤耐性微生物の重要なリザーバとして最近注目されているが、腸球菌属(Enterococcus spp.)による乾燥表面バイオフィルムの形成および持続についてはほとんど知られていない。

目的

本研究は、様々な腸球菌属および臨床分離株について、医療において重要な材料上における乾燥表面バイオフィルム形成能について評価すること、その長期生存について評価すること、ならびに乾燥表面バイオフィルムの培養可能性に影響を及ぼす因子を探索することを目的とした。

方法

複数の腸球菌分離株について、流行株およびバンコマイシン耐性株を含め、標準化された乾燥表面バイオフィルム形成モデルを用い、医療環境で一般的に使用されている一連の表面および材料上で培養した。培養可能性を、経時的な希釈およびコロニー計数によって評価した。走査電子顕微鏡、共焦点顕微鏡およびフローサイトメトリーを用いて構造特性を明らかにした。

結果

すべての腸球菌分離株が、ステンレススチールおよび他の臨床材料の上で乾燥表面バイオフィルムを形成した。乾燥表面バイオフィルムは、最長 84 週間にわたり 20°Cおよび相対湿度 55%にて高い培養可能性(5 ~ 6 log10)を維持した。VRE 分離株は VRE 以外の分離株と比べて培養可能性が低いことが示された。乾燥表面バイオフィルム形成と表面の粗さまたは疎水性との間に相関は認められなかった。走査電子顕微鏡、共焦点顕微鏡およびフローサイトメトリーの結果から、乾燥表面バイオフィルムの構造および生存能には表面による不均一性が確認された。

結論

腸球菌属は、多様な医療表面において持続的に生存する乾燥表面バイオフィルムを形成することができ、このことが環境における病原体の持続的な生存に寄与する。現時点では依然として、機械的除去と効果的な消毒薬を組み合わせることが、硬性表面における乾燥表面バイオフィルムの制御にとって最善の方法である。したがって当面の間は、清掃および消毒の強化が、硬性表面における乾燥表面バイオフィルムの制御にとって最善の方法であろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本研究により、腸球菌の乾燥表面でのバイオフィルム形成が明らかとなり、最大約 1 年 8か月もの長期間生存が確認されたことは、VRE と非 VRE での生存期間に差はあるものの、環境で乾燥状態でもバイオフィルム中に長期間生存し、交差感染の原因となっていると考えられる。環境整備において、腸球菌は確実な物理的清掃と化学的な消毒の実施が、VRE の感染拡大を防ぐために必要な対策であることを裏付ける論文である。

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