抗菌加工された布製スクラブは、スクラブ上における病原体増殖の予防が可能である★

2025.11.25

Antimicrobial-treated fabric scrubs can prevent pathogen proliferation on scrubs

C. Westlake*, K.M. Young, B. Cassingham, L. Forsythe
*MemorialCare Shared Services, USA

Journal of Hospital Infection (2025) 165, 57-63

背景

米国の病院では年間約 170 万件の医療関連感染症が発生している。医療従事者の衣類は患者ケア時に日常的に汚染されており、患者への細菌の伝播源となる可能性がある。これまでの研究で、抗菌加工された繊維・衣類には病原体から保護する活性が示されている。しかし、これまでの研究はサンプル数、作業環境、および盲検化の欠如などによる限界があった。

目的

スクラブの病原菌獲得を低減するために、内科/外科病棟で登録看護師および患者ケア技術者が着用している抗菌加工された布製スクラブの有効性、患者因子と病原体獲得との関係、ならびにスクラブの種類による満足度/有害事象を明らかにすること。

方法

クロスオーバーデザインによる無作為化二重盲検 3 群対照試験を、フルサービスを提供する248 床の非営利病院において、内科/外科病棟の患者 127 例(事後検出力 = 0.994)を対象に実施した。被験者は、患者ケアに12 時間シフトを 3 連続で従事した登録看護師および患者ケア技術者とした。2 種類の実験用スクラブ(赤-#1[亜鉛ピリチオンのみで処置]および青-#2[亜鉛ピリチオン+親水性フッ化炭素樹脂で処置])を、未処置の対照スクラブ(黒-#3)と比較して評価した。

結果

病原体の獲得にはスワブ採取の部位による差はなかった一方、病原体増殖は青-#2 スクラブにおいて赤-#1 スクラブ(P < 0.001)および黒-#3 スクラブ(P < 0.001)よりも有意に少なかった。患者の相互作用、感染症、ケア活動/特性、および病原体獲得の間に有意な関係は認められなかった。製品に関連した有害事象が 1 件報告された(赤-#1 スクラブ、頭痛)。スクラブに対する満足度は高かった。

結論

亜鉛ピリチオン+親水性フッ化炭素樹脂で処置したスクラブでは、亜鉛ピリチオンのみで処置したスクラブまたは対照スクラブと比べて病原体増殖が少なかったことが示された。医療環境にこのようなスクラブを導入することで、医療従事者の衣類から患者および環境への病原体伝播を低減でき、医療関連感染症の発生率を低下できる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

抗菌加工したスクラブでの病原体の増殖予防効果を盲検化して示した研究。本研究では病原体獲得と患者間感染相互作用の回数および患者ケア活動との間に相関がないことを示しており、看護師が創傷ケアや入浴を行っている場合は汚染のオッズが高く、接触予防策を講じて患者をケアした場合は汚染のオッズが低いことを示した以前の報告データとは対照的である点は興味深い。スクラブは実際には洗濯して繰り返し使用されるものであるので、効果の持続についてもあわせて知りたいところである。

同カテゴリの記事

2025.10.05
Costs associated with the treatment of surgical site infection among solid organ transplant recipients: a scoping review

J.N. da Silva Ferreira*, S.R. Secoli, J. Tanner, V. de Brito Poveda, R.A. Oliveira
*Universidade de São Paulo, Escola de Enfermagem, Brazil

Journal of Hospital Infection (2025) 164, 125-133
2025.02.11
Antimicrobial efficacy of an experimental UV-C robot in controlled conditions and in a real hospital scenario

B. Casini*, M. Scarpaci, F. Chiovelli, S. Leonetti, A.L. Costa, M. Baroni, M. Petrillo, F. Cavallo
*University of Pisa, Italy

Journal of Hospital Infection (2025) 156, 72-77
2024.04.06
Effect of participation in a surgical site infection surveillance programme on hospital performance in Japan: a retrospective study

J. Kawabata*, H. Fukuda, K. Morikane
*Kurume University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 183-191


2021.10.31
Air dispersal of multidrug-resistant Acinetobacter baumannii: implications for nosocomial transmission during the COVID-19 pandemic

S.-C. Wong*, G.K.-M. Lam, J.H.-K. Chen, X. Li, F.T.-F. Ip, L.L.-H. Yuen, V.W.-M. Chan, C.H.-Y. AuYeung, S.Y.-C. So, P.-L. Ho, K.-Y. Yuen, V.C.-C. Cheng
*Hong Kong West Cluster, China

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 78-86


2024.11.12
Photodynamic coatings kill bacteria on near-patient surfaces in intensive care units with low light intensities

B. Kieninger*, R. Fechter, W.Bäumler, D. Raab, A. Rath, A. Caplunik-Pratsch, S. Schmid, T. Müller, W. Schneider-Brachert, A. Eichner
*University Hospital Regensburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2024) 153, 39-46