固形臓器移植レシピエントにおける手術部位感染症の治療に関連するコスト：スコーピングレビュー★
Costs associated with the treatment of surgical site infection among solid organ transplant recipients: a scoping review J.N. da Silva Ferreira*, S.R. Secoli, J. Tanner, V. de Brito Poveda, R.A. Oliveira *Universidade de São Paulo, Escola de Enfermagem, Brazil Journal of Hospital Infection (2025) 164, 125-133
固形臓器移植レシピエントにおける手術部位感染症（SSI）の発生率およびこれに関連する経済的負担について調べた研究は驚くほど少ない。本研究の目的は、固形臓器移植レシピエントにおける SSI 治療に関連する直接費用に関する現在のエビデンスを評価することであった。本スコーピングレビューは、Joanna Briggs Institute から発表されているガイドラインに準じて実施した。7 つのデータベースを対象に検索を行った。灰色文献の出典および組み入れた研究の参考文献リストを、2024 年 11 月に閲覧した。固形臓器移植レシピエント（年齢 18 歳以上）を対象に実施された一次科学研究で、SSI の発現に関連する直接費用を報告しているものを組み入れた。コストの推定値は、共通通貨として 2024 年時点の米ドルに換算した。4,145 件の記録を取得した。最終サンプルは 5 件の研究であった。研究 3 件は肝移植レシピエントを、研究 2 件は腎移植レシピエントを対象としていた。肝移植における SSI 発生率は 15.7％から 37.8％の範囲であり、腎移植では 4.1％から 18.5％の範囲であった。重症度で補正後、肝移植レシピエントにおけるSSI 治療のコストは 17,248 米ドルから 246,548 米ドルの範囲であり、腎移植レシピエントにおけるコストは 20,183 米ドルであった。最も多く報告されていたコストのパラメーターは、入院期間、薬物療法、臨床検査、および人的資源であった。固形臓器移植レシピエントにおける SSI 治療で発生する追加の直接費用は、社会にとって大きな経済的負担をもたらし、医療システムの持続可能性に影響を及ぼす可能性がある。
監訳者コメント ：
移植医療は高額なコストがかかり、移植後の感染症は心臓移植 35％から肺移植 75％と、極めて高い医療施設内感染の発生率である。そのなかで SSI が発生すると再入院リスクが 5 倍、死亡リスクは 2 倍になり、入院期間が延長するばかりか、移植臓器の喪失にもつながり、医療コストの増加につながる。しかしながら、これまで SSI 発生によるコストについて包括的かつ詳細な分析がされておらず、このレビューにより費用対効果の高い介入策、特に SSI 予防に重点を置いた対策を考える必要がある。
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