救急部における超音波プローブの細菌汚染:多施設共同観察研究

2025.09.17

Bacterial contamination of ultrasound probes in emergency departments: a multi-centre observational study

T. Yamanaka*, R. Yamamoto, K. Yajima, I. Yamashita, T. Kurihara, D. Kujirai, K. Moritani, H. Kamikura, H.Koh, J. Sasaki
*Keio University School of Medicine, Japan

Journal of Hospital Infection (2025) 163, 23-29

背景

超音波検査は、患者の評価および診断を目的に救急部で頻繁に用いられている。超音波プローブには体液および血液に由来する細菌汚染リスクがあるにもかかわらず、プローブの細菌汚染の発生率は依然として明らかでない。

目的

本研究の目的は、救急部における超音波プローブの細菌汚染について、病院のタイプおよび再処理方法に焦点を当てて評価することであった。

方法

2023 年に、大学病院 1 施設、大学病院でない 3 次病院 1 施設、および地域病院 1 施設において多施設共同前向き観察研究を実施した。救急部受診患者に用いられたプローブからサンプルを採取した。再処理方法は、水に浸漬したワイプのみ、水に浸漬したワイプとエタノールワイプの併用、四級アンモニウム浸漬ワイプのみ、四級アンモニウム浸漬ワイプとエタノールまたは次亜塩素酸塩浸漬ワイプとの併用であった。転帰評価項目は、細菌汚染レベル、および耐性菌株とした。細菌汚染レベルは、各プローブの総表面積当たりのコロニー形成単位(cfu)により測定した。

結果

cfu 中央値は、大学病院で 10(四分位範囲[IQR]0 ~ 50)、大学病院でない 3 次病院で 40(IRQ 10 ~ 135)、および地域病院で 30(IRQ 1 ~ 95)であった。再処理方法別の cfu 中央値は、水に浸漬したワイプのみでは 20(IRQ 1 ~ 90)、水に浸漬したワイプとエタノールワイプの併用では 10(IRQ 0 ~ 20)、四級アンモニウム浸漬ワイプのみでは 90(IRQ 40 ~ 180)、ならびに四級アンモニウム浸漬ワイプとエタノールまたは次亜塩素酸塩浸漬ワイプとの併用では 20(IRQ 1 ~ 50)であった。耐性菌株はプローブの 18.2%で検出された。

結論

救急部の超音波プローブにおいて、医療施設のタイプおよび再処理方法の違いにかかわらず、耐性菌株を含め、高いレベルの細菌汚染が認められた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

救急外来における超音波プローブの汚染は深刻である。本研究は、消毒薬ワイプで拭いた後も、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を含む耐性菌が18.2%のプローブから検出されるという、極めて重要な事実を示した。特に、第四級アンモニウム塩ワイプ単独で使用した場合に菌の量が最も多かったという結果は、医療現場での「拭き取り」という行為自体の限界を示唆している可能性がある。より信頼性の高い、標準化された消毒方法の導入が急務である。

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