オランダの集中治療室病室における水を使用しないケア:ルーチンの患者ケアにおけるグラム陰性菌検出への影響
Water-free care in Dutch intensive care unit patient rooms: impact on Gram-negative bacteria detections in routine patient care S.A.M. van Kessel*, A.F. Schoffelen, K.H.S. van Son, D.W. Notermans, J.A. Severin, F. Bakhshi-Raiez, F. Velthuis, M. Schipper, D. Dongelmans, A. Verbon, C.C.H. Wielders, on behalf of the ISIS-AR study group *National Institute for Public Health and the Environment (RIVM), The Netherlands Journal of Hospital Infection (2026) 170, 9-16
背景
集中治療室(ICU)の患者は、グラム陰性菌(GNB)による医療関連感染症のリスクが高く、病室のシンクが GNB のリザーバーであることが知られている。本研究では、非アウトブレイク時のオランダの ICU における、水を使用しないケアの実施と GNB 検出率との関連を検討した。
方法
Infectious diseases Surveillance Information System-Antibiotic Resistance(ISIS-AR)、National Intensive Care Evaluation レジストリ、および水を使用しないケアに関する質問票から得たデータを用いて、後向き生態学的研究(2018 年から 2022 年)を実施した。7 つの細菌群(大腸菌[Escherichia coli]、肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]、緑膿菌[Pseudomonas aeruginosa]、アシネトバクター[Acinetobacter]属菌、腸内細菌目細菌全体、基質拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌[ESBL-E]およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌)の検出(保菌および感染)を ICU 年レベルで解析した。ICU および患者の特性で調整を行い、水を使用しない ICU と水を使用するICU とを比較した発生率比(IRR)を算出した。
結果
37 の ICU から得られたデータを解析した。水を使用しない群では 22 ICU 年、水を使用する群では 131 ICU 年であった。水を使用しない ICU は規模がより大きく、手術入院および機械的換気患者がより多かった。すべての細菌について、調整後 IRR は 1 に近く、95%信頼区間(CI)は ESBL-E の 0.82(95%CI 0.44 ~ 1.52)からアシネトバクター属菌の 1.39(95%CI 0.69 ~ 2.84)まで幅広かった。感度分析でも同様の結果が示された。
結論
水を使用しないケアの GNB 検出率に対する望ましい影響が単一の ICU で報告されているが、それらの結果は、このオランダの多施設共同研究には反映されなかった。その説明として考えられるのは、低い感染有病率、高い予防基準、選択的除菌の広範な使用、わずかな差を検出するための検出力の不足である。非アウトブレイク時の水を使用しないケアの有益性に関するエビデンスは依然として限られており、異なる ICU 環境における今後の研究の重要性が強調される。
監訳者コメント:
オランダの 37 施設を対象とした大規模研究において、非アウトブレイク時の ICU における「水を使わないケア」は、グラム陰性菌の検出率低下と有意な関連を示さなかった。これはアウトブレイク時の先行知見とは対照的であり、背景にある徹底した標準予防策や選択的消化管除菌(SDD)の普及が影響したと推察される。多額の費用を要するシンク撤去を日常的な標準ケアとして導入するには、現状ではエビデンスが不十分と言わざるを得ない。今後は特定の感染症や患者背景に応じた文脈依存的な有効性の再検証が求められる。
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