ドイツの大規模大学病院 1 施設において、抗菌薬耐性菌の拡散に対する病院の頑健性にSARS-CoV-2 パンデミックが及ぼした影響
Impact of the SARS-CoV-2 pandemic on hospital robustness to the spread of antibiotic-resistant bacteria in a large German university hospital G. Donvito*, F.Bürkin, T. Donker *University of Freiburg, Germany Journal of Hospital Infection (2025) 162, 68-75
背景
院内の診療部門間および病棟間での患者の移送は高い頻度で発生し、それに伴って、抗菌薬耐性菌の診療部門間伝播のリスクがもたらされる。こうした細菌は、すでに保菌および感染を生じやすくなっている患者にとってリスクとなる。
目的
重症呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)パンデミックが、ドイツの大規模大学病院 1 施設の院内ネットワークに及ぼす影響を評価すること。
方法
2019 年から 2023 年の間に同病院から収集されたデータを用いて、各月の時間分割時間ネットワークを生成することで、全病棟間における全患者の移動を示す院内移送ネットワークを表すモデルを作製した。同ネットワークを記述し、抗菌薬耐性菌の拡散に対するその頑健性の評価を、病棟間におけるアウトブレイクのシミュレーションにより行った。
結果
2020 年 4 月、SARSCoV-2 パンデミックのために多くの待機的手術がキャンセルされた時に、同ネットワークの頑健性は、他のすべての月と比較して顕著に増加した。同ネットワークは研究期間を通して比較的安定していたにもかかわらず、病院合併のために、病院内の構造における内的変化による影響が認められた。
結論
院内移送ネットワークは、SARS-CoV-2 パンデミックによる外的影響を受けており、院内病原体の潜在的な拡散の速度が下がった。同ネットワークは全体的に安定していて速やかに回復したが、内的な力が同ネットワークの構造に影響を及ぼした。患者移送の影響をより良く理解することは、将来的に病院内における抗菌薬耐性の拡散に対する介入戦略のデザインに役立つだろう。
監訳者コメント:
新型コロナウイルス対応に伴い院内の患者移動が抑制された結果、薬剤耐性菌の拡散も低下したとする研究である。患者移動が拡散に及ぼす影響の大きさを再認識させるとともに、動線管理や転棟・転科の最適化の重要性を示唆する。
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