一次人工股関節全置換術後の関節感染:2013 年から 2022 年の 2 つの国民健康登録における一次人工股関節全置換術後の手術部位感染と人工関節周囲感染症の傾向★

2025.05.13

Trends in surgical site infection and periprosthetic joint infection after primary total hip arthroplasty in two national health registers 2013–2022

Ø.E. Karlsen*, H. Dale, O. Furnes, H-M. Eriksen-Volle, M. Westberg
*Betanien Hospital, Norway

Journal of Hospital Infection (2025) 159, 148-155

背景

本研究の目的は、2013 年から 2022 年のノルウェーにおける原発性人工股関節全置換術(THA)後の手術部位感染症(SSI)、SSI による再手術、人工関節周囲感染症(PJI)による再手術の傾向を評価することである。初回 THA 後の PJI に関するサーベイランスツールとしての能力を比較するために、2 つの全国健康登録が使用された。

方法

ノルウェーの医療関連感染サーベイランスシステム{Norwegian Surveillance System for Healthcare-Associated Infections(NOIS)}を用いて、THA 後の SSI およびSSIによる再手術の 30 日後の発生率とリスクを評価した。NOIS への報告は必須である。Norwegian Arthroplasty Register(NAR)により、THA 後の PJI による30 日および 1 年の再発率と再手術のリスクを評価した。NAR への報告は、患者の同意に基づいている。記述統計、性別、年齢、American Society of Anesthesiology(米国麻酔科学会)分類を考慮し調整 Cox 回帰分析を行った。

結果

合計87,923 件の一次 THA が NOIS に登録され、1,393 件(1.6%)が 30 日 SSI として報告されていた。NOIS におけるSSI による 30 日再手術率は、0.9%(N = 765、30 日追跡調査は 96%であった。NAR では、91,194 件の THAのうち、PJI による 30 日再手術率は、0.8%(N = 725)、1 年再手術率は、1.2%(N = 1,019)であった。NOISのSSIに対する再手術と比較した NAR の PJI に対する 30 日再手術の完全性は95%であった。年間リスク因子は、登録記録間で同様であった。NOIS では SSI{調整後のハザード率比(aHRR)0.92、95%信頼区間(CI]0.90 ~ 0.93))および SSI に対する再手術(aHRR 0.95、95%CI 0.92 ~ 0.97)が、NAR では PJI に対する再手術(30 日aHRR 0.96、95%CI 0.94~0.99、1 年:aHRR 0.95、95%CI 0.95 ~ 0.99)がそれぞれ減少した。

結論

2013 年から 2022 年の期間、SSI の減少と PJI による再手術の減少は対応していた。患者の同意に基づいた NAR では強制的なNOISと比較して、PJIに対する 30 日再手術の完全性が95%であり優れていると考えられる。この結果は、一次 THA 後の SSI と PJI の発生率が真に減少していたことを示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

ノルウェーの国営医療制度とは異なり、日本では民間病院が多数を占めるため、全国統一的な感染症サーベイランスの実施は難しく、また、日本整形外科学会の人工関節レジストリは任意参加のため、網羅性に課題がある。さらに日本では在院日数短縮のため術後 30 日間の確実な追跡は困難である。本研究ではノルウェーでは義務的報告(NOIS)と同意ベース(NAR)の 2 つのレジストリで 95%の一致率を達成し、補完的監視システムの有効性を示している。日本でも人工関節学会レジストリと感染症サーベイランスの連携により、より精度の高い監視が可能になる可能性がある。

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