ブラジル高負担 3 次病院における医療従事者の職業性結核リスクに対する WHO 推奨の結核対策の影響:24 年間にわたる後方視的分析★★
Impact of WHO-recommended tuberculosis control measures on occupational tuberculosis risk among healthcare workers in a high-burden tertiary hospital in Brazil: a 24-year retrospective analysis P. Bortolozzi-Mendes*, M. Rennó de Campos, H. de Oliveira Couto, M.C. Vieira de Almeida, J.G.C. Gonçalves de Oliveira, F. Bellissimo-Rodrigues, C.H. Miranda, A. Pazin-Filho *University of São Paulo, Brazil Journal of Hospital Infection (2025) 157, 75-82
背景
結核は、特に低中所得国において、依然として重大な公衆衛生上の懸念である。医療従事者は、長期の曝露により感染リスクが高くなる。世界保健機関(以下、WHO)は、職業的リスクを低減するために、管理上の介入、構造的介入、および個人防護使用に焦点をあてたガイドラインを提案している。
目的
医療従事者の結核発症リスクに関する WHO 推奨の対策の有効性を評価すること。
方法
本研究は、2000 年から 2023 年の期間に公立の3 次救急外来に入院した患者の結核発生率を医療従事者と比較した後視方的解析である。結核の届出は、公共データベースからリベイラン・プレト市の医療従事者および一般市民の中から抽出された。
結果
2000 年から 2023 年までの間、ED では 4 年ごとに平均 148,496 例の患者を治療し、結核患者は 4 年ごとに 202 例であった。10 万人当たりの結核患者の有病率比は 80 から 170 に増加し(P = 0.035)、発生率は 10 万人当たり 39 から 157 に増加した(P = 0.046)。医療従事者の結核罹患率は 412.0(85.0;1201.0)から 179.0(20.0;619.0)に減少した。合計で 11 人の医療従事者が結核と診断された。医療従事者と一般住民の結核罹患率の相対リスクは、プログラムの実施前には有意に高かったが、実施後には同等となった。
結論
WHO が推奨する結核対策を実施することで、ブラジルの高負担3次病院における医療従事者と一般人口の結核罹患率比を減少させることが実証された。
監訳者コメント:
本研究では、WHO が推奨する 3 つの結核制御策(①管理的介入、②構造的介入、③個人防護具の使用)が、ブラジルの感染多発 3 次医療機関において医療従事者の職業的結核リスクを大幅に低減したことが示された。結核の罹患率が低下している日本においても、高齢者施設や多国籍患者の増加により、職業感染リスクは依然として存在する。具体的には①患者を早期に特定し、陰圧隔離室へ迅速に誘導するためのプロトコル(即時隔離のための体制整備[管理的介入])構築は、日本の中小病院でも取り入れ可能であり、他の感染症にも応用できる。②陰圧隔離室の有無は感染対策の効果に直結する。日本の感染症指定医療機関のみならず、地域中核病院においても導入検討の価値がある(陰圧室の設置と導線管理[構造的介入])。③また PPE の定期的供給と使用法の教育は、日本でも全医療施設で徹底すべきである。特に TB だけでなく、COVID-19 など他の空気感染疾患にも対応可能な対策として汎用性がある(N95 マスクを含む PPE の確保と教育訓練[個人防護具])。また、④医療従事者への年次教育のほか、TB 罹患歴のあるスタッフへのフォローアップ、患者搬送システムとの調整といった運用面は、日本の地域医療連携でも活用可能である(多職種連携と人的資源の管理)。⑤本研究で示されたように、長期的かつ定量的なデータ収集は、結核を含む感染症対策の効果を測る上で重要である。日本でも電子カルテや自治体の感染症報告データを活用し、類似の解析が可能である(疫学的サーベイランスの強化)。
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