フランスの新生児病棟における多剤耐性スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)ST29 のアウトブレイク
Outbreak of multidrug-resistant Staphylococcus haemolyticus ST29 in a French neonatal unit E. Pouly*, A. Biguenet, P. Cholley, D. Hocquet, X. Bertrand *Centre Hospitalier Universitaire, France Journal of Hospital Infection (2025) 156, 17-20
背景
スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)は、臨床的に重要なコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であり、とくに早産児において院内感染症の原因となることが多い。
目的
新生児病棟における多剤耐性 S. haemolyticus のアウトブレイクについて報告すること。
方法
患者のスクリーニング、分離株の遺伝子タイピング、ならびに環境調査など従来の方法を用いてアウトブレイクを調査した。数々の感染制御策を講じた。
結果
2022 年と 2023 年に、フランスの大学病院 1 施設の新生児病棟で、多剤耐性 S. haemolyticus の ST29 クローンのアウトブレイク(感染症 40 例、保菌 71 例)が発生した。実施された感染制御策は、アウトブレイクを部分的に制御するにとどまった。調査では、伝播源と伝播様式がはっきりと特定されなかったが、患者がリザーバとなり、医療従事者により伝播された可能性がもっとも高い。このエピソードは、フランスの複数の新生児病棟における S. haemolyticus ST29 の全国規模のアウトブレイクを背景として発生した。
結論
この長期に及ぶ S. haemolyticus ST29 のアウトブレイクは、フランスの複数の新生児病棟で S. haemolyticus 関連感染症の発生率が増加する原因となった。新生児 ICU におけるこのような病原体の蔓延を抑制するために、未然防止策を講じることは極めて重要である。
監訳者コメント:
新生児集中治療室(NICU)における Staphylococcus haemolyticus の感染伝播に関する報告である。本菌はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の一種であり、新生児に感染症を引き起こす病原体として認識されている。本研究では 40 例の感染例と 71 例の保菌が確認され、NICU において MRSA のみならず CNS も水平伝播している可能性が示唆された。しかし、明確な伝播経路や機序については解明には至っておらず、今後の検討が望まれる。MRSA 対策を基本としつつ、CNS を含むブドウ球菌属菌についても微生物学的監視の必要性を考えさせられる内容である。
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