感染予防・制御活動の不履行とその予測因子:パンデミック前後研究から得られた洞察★★
Missed infection prevention and control activities and their predictors: insights from a pre- and post-pandemic study C. Moreal*, S. Chiappinotto, I. Blackman, L. Grassetti, S. Scarsini, B. Narduzzi, M. Mesaglio, C. Tascini, A. Palese *University of Udine, Italy Journal of Hospital Infection (2025) 155, 95-105
目的
本研究の主要目的は、パンデミック前とパンデミック後の感染予防・制御(IPC)活動の不履行における差(あるとすれば)について、また関連する予測因子について比較することであった。副次的目的は、IPC 活動の不履行と未完了の看護ケアとの間にある関係を同定することであった。
方法
大規模大学病院 1 施設において、Checklist for Reporting of Survey Studies ガイドラインに従って、反復横断調査を 2019年(パンデミック前、看護師 184 名)および 2024 年(パンデミック後、看護師 240 名)に実施した。Missed Nursing Care in Infection Prevention and Control Survey(MNC-IPC)(感染予防と管理における看護ケア不履行調査)(パートA:活動不履行、パートB:理由)、Unfinished Nursing Care Survey(UNCS)(未完了の看護ケア調査)のデータ、ならびに職業データを、両期間について均一に収集した。
結果
自己報告による IPC 活動不履行は、5 件中 2.15 件(95%信頼区間[CI]2.05 ~ 2.25)から 1.51 件(95%CI 1.45 ~ 1.58)に減少し(P < 0.0005)、同様に、関連する理由も 4 件中 2.35 件(95%CI 2.24 ~ 2.46)から 2.20 件(95%CI 2.11 ~ 2.30)に減少した(P = 0.046)。MNC-IPC 総スコアにおける全分散は、以下の異なる予測因子によって 22.8%(パンデミック前)および 20.7%(パンデミック後)が説明された:パンデミック前ではシステムレベルの問題(推定値 0.409、P = 0.008)および看護師の離職意思(0.107、P = 0.023)、ならびにパンデミック後では最終シフト時の入院患者数(0.015、P = 0.053)、組織上の問題(0.186、P < 0.0005)および優先順位設定上の問題(0.092、P = 0.053)。MNC-IPC スコアおよび UNCS スコアから、両期間において有意な相関が報告された。
結論
IPC 活動不履行の割合はパンデミック後の期間で低く、これはおそらくシステム上の取り組みおよびパンデミック中に学習された教訓のためであり、これらが看護師において IPC 実践をルーチン化した可能性がある。全体的に、IPC ケア不履行の予測因子はパンデミック後に変化しており、このことから、特に病棟レベルおよびより若年の看護師を対象として、新しいパターンがみられること、ならびに革新的な介入が必要であることが示唆される。UNCS と MNC-IPC の間の相関から、1 つの地域における対象を絞った改善が、他の地域においても有益な結果をもたらす可能性があることが示唆される。しかし、両者に共通の性質にもかかわらず、両者は2 つの異なる現象を表している。
監訳者コメント:
COVID-19パンデミック後の感染対策の実施状況は、パンデミック中に実施された感染対策により改善されており、これは組織での対応と看護師が実体験での感染制御活動の結果が現れ、それが継続していると推測される。未完了の看護ケアと感染制御活動の不履行の間に相関が見られたことから、どちらか一方を改善することで他方も改善する可能性を示唆する。本論文は看護師を対象としたものであるが、病棟全体での感染制御活動を考えると、関わりは少ないものの看護師以外の職種(理学療法士、薬剤師、医師など)においても同様の実態調査分析が期待される。
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