流行地域における ESBL 標的治療の経験的な使用を排除するための機械学習に基づくリスク評価ツール★★

2024.07.31

Machine-learning-based risk assessment tool to rule out empirical use of ESBL-targeted therapy in endemic areas

H.D. Ravkin*, R.M. Ravkin, E. Rubin, L. Nesher
*Ben-Gurion University of the Negev, Israel

Journal of Hospital Infection (2024) 149, 90-97


背景

抗菌薬適正使用支援は、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を標的とした治療を必要とする患者を特定することに重点を置いている。「rule in」ツールは、流行の少ない地域では広範囲に研究されてきたが、そのようなツールは、ESBL 産生病原体の高蔓延地域では、ほぼすべての患者が選択されるので、不適切である。

目的

耐性のレベルが高い地域に適した機械学習に基づく「rule out」ツールを開発すること。

方法

尿培養で大腸菌(Escherichia coli)や肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)が検出された患者 17,913 例(45%が ESBL)からのデータで、リスク予測モデルを訓練し妥当性を確認するのに、勾配ブースティング決定木(デシジョンツリー)を使った。変数の様々な組み合わせの予測力を、変数の寄与を評価するシャープレイ値を使って評価した。

結果

モデルは、ESBL の流行地域において、ESBL 耐性のリスクが低い患者を特定するのに成功した(ROC 曲線下面積 0.72)。予測されたリスクが最も低い 30%の患者を選択するのに使用したとき、モデルの陰性適中率は 0.74 以上であった。入力される特徴が 7 つの単純化されたモデルは、完全なモデルとほぼ同程度にうまく機能することが分かった。この単純化されたモデルは、ウェブのアプリケーションとして無料で使うことができる。

結論

この研究で、抗菌薬耐性のリスク計算機は、ESBL 流行地域において、ESBL 標的治療の使用を減少させるための実行可能な「rule out」戦略になり得ることが分かった。このモデルは、限られた特徴を使ったバージョンも性能がしっかりしているので、このようなツールを臨床で使用することは実行可能である。ESBL 産生病原体の割合が増加している時代において、ESBL 産生病原体の高蔓延地域の患者全員に一次治療としてカルバペネム系の経験的使用を求めた専門家もいたが、このツールは、重要な代替法を提供している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント:

ESBL 産生菌が蔓延しているイスラエルからの報告。日本のように ESBL 産生菌が比較的少ない国では ESBL 産生菌をルールインして、経験的治療を行うことが重要となるが、高蔓延国においては ESBL 産生菌をルールアウトすることで抗菌薬適正使用支援につなげることができる。今後、ESBL 産生菌が日本で増え続けた時にこのルールアウトがそのまま使用できるかはわからないが、地域に状況に合わせた治療戦略ということで考えさせられることが多い研究である。

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