北京の集中治療室における侵襲性酵母菌感染とアゾール耐性の新しい傾向★★

2024.07.31

Emerging trends of invasive yeast infections and azole resistance in Beijing intensive care units

J. Yu*, W. Yang, X. Fan, E. Cui, R. Min, H. Yuan, Y. Hu, H. Wang, G. Zhang, Y. Zhao, Y. Xu, L. Guo
*Peking Union Medical College Hospital, Peking Union Medical College, China

Journal of Hospital Infection (2024) 149, 46-55


背景

侵襲性真菌感染は、世界中で、医療現場の患者にとって、かなりの脅威となっている。真菌の種類の分離頻度の最近の変化や、基準となる抗真菌薬感受性試験の実施の困難さは、真菌と、それらの抗真菌薬耐性を監視することの重要性をはっきりと示している。

方法

2 相から成るサーベイランスプロジェクトを、中国の北京で、12 の区の 37 の施設を対象に、2012 年 1 月から 2013 年 12 月と、2016 年 1 月から2017 年 12 月に実施した。

結果

我々は、2016 年から 2017 年の集中治療室(ICU)におけるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の割合は、2012 年から 2013 年の期間と比べて、有意に低下したことを見出したが、C. albicans は、依然として最も多い病原体であった。それとは対照的に、Nakaseomyces glabratus(旧称 カンジダ・グラブラータ[Candida glabrata])とカンジダ・トロピカーリス(Candida tropicalis)の分離頻度は、2 相から成るサーベイランス中に顕著に増加した。C. tropicalis の分離頻度の高さと、そのアゾール系薬剤に対する耐性は、ICU の患者への深刻な脅威となっていた。北京で侵襲性真菌感染を引き起こしていた病原体は、エキノキャンディン系に比較的感受性であった。C. albicans は、アゾール系に感受性を示し続けた一方で、C. tropicalis のアゾール系に対する耐性や増加率は、特に顕著であった。新生児 ICU において、抗真菌薬への感受性が似ているクラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)およびカンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)複合体が短期間で多数出現したため懸念が生じた。そのような発生は、これらの病原体がICU の環境内で伝播し、長期存在し続けている可能性を示している。

結論

我々の研究は、侵襲性真菌感染の疫学に関する既存のデータを補完している。北京で ICU の患者に対する薬物療法の管理を慎重に行なうこと、C. tropicalis のアゾール耐性に特に注意することが必須である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

もともと抗真菌薬の種類は 4 種類と限られており、フルシトシンとアムホテリシン B しかなかった時代と比較すると、治療はアゾール系とキャンディン系の登場で治療の選択肢が増えている。しかしながら侵襲性真菌感染症におけるカンジダ属が、これらの有効な抗真菌薬に対して耐性になりつつあることは大きな問題である。また、同定がしづらく、多剤耐性傾向の強い C. auris については調査が 2017 年 12 月までのため、まだ検出されていない。その後 2018 年に北京ではじめて分離されており、幸いにも耐性傾向は強くなかった。その後同菌による 3 例の血流感染症が北京の病院で報告されており、すべて新生児 ICU での検出であったことから、今後耐性傾向の強いカンジダ属がさらに増加することが懸念される。

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