院内伝播と死亡率に対する COVID-19制御対策の段階的縮小の影響を予測する:フランスのリハビリテーション病院におけるモデル化研究★
Predicting consequences of COVID-19 control measure de-escalation on nosocomial transmission and mortality: a modelling study in a French rehabilitation hospital D.R.M. Smith*, A. Duval, R. Grant, M. Abbas, S. Harbarth, L. Opatowski, L. Temime *University of Oxford, Oxford, UK Journal of Hospital Infection (2024) 147, 47-55
序論
感染制御対策は、院内の COVID-19 の予防に有効であるけれども、医療経済学的にかなりの負担となる。このことが、SARS-CoV-2 の伝播のリスクが低い環境においては、「段階的縮小」を実施する動機となる。しかし、特に新規の変異株や不均一な集団免疫のことを考えると、段階的縮小の影響を予測するのは難しい。
目的
感染制御対策の段階的縮小が院内の COVID-19 のリスクにどのように影響するかを推測すること。
方法
個人に基づく伝播モデルを使用し、多様な制御対策が実施されている(検査と隔離、全員がマスク着用、部屋は個室)フランスの長期ケア病院における SARS-CoV-2 のアウトブレイクと制御対策の段階的縮小をシミュレーションした。報告されていたアウトブレイクからの COVID-19 症例致死率(CFR)の推定値を使い、段階的縮小による COVID-19 の超過死亡率を定量した。
結果
全員が感染への感受性がある集団で、全員がマスク着用と個室の両方を段階的縮小した結果、病院全体のアウトブレイクで感染が 114 件(95%信頼区間[CI]103 ~ 125)超過したのに対して、全員がマスク着用を段階的縮小したのみでは、感染が 5 件の超過(3 ~ 7)、個室を段階的縮小したのみでは、感染が 15 件の超過(11 ~ 18)であった。両方の対策を段階的縮小し、COVID-19 の第一波からの CFR を適用したときは、患者の超過死亡率の範囲は、1.57(1.41 ~ 1.71)から 9.66(8.73 ~ 10.57)件の超過死亡/1,000 患者・日であった。それとは対照的に、その後のパンデミックの波からの CFR を適用し、感染への感受性があるのは個人の40 ~ 60%と仮定したとき、超過死亡率の範囲は、0(0 ~ 0)から0.92(0.77 ~ 1.07)件の超過死亡/1,000 患者・日であった。
結論
バンドル化した COVID-19 制御対策を段階的縮小することは、院内における SARS-CoV-2 の広範囲の伝播を促進する可能性がある。しかし、感染に対して少なくとも中等度の免疫がある集団においては、「ワクチン後の」時期で推定された CFR と同程度とすると、超過死亡率は、おそらく限られたものである。
監訳者コメント:
COVID-19 における厳格な感染対策は高齢者やリハビリテーション中の患者にとって、精神的にも身体的にも悪影響を及ぼすため、できる限り早く、また感染対策の縮小化をやりたくなるが、感染対策の縮小については全体的な複数の対策の縮小ではなく、マスク着用や個室対応といった個々の対策を縮小しながら状況を判断して実施することが良さそうである。また COVID-19 における致死率については、ウイルス株の病原性が影響するものの、ワクチンによる免疫獲得はさらに大きく減少させることはすでにわかっており、ワクチン接種と感染対策の縮小は並行して実施することが推奨される。今後の SARS-CoV-2 の感染力や病原性により、再度感染対策の厳格化も予想されるため、慎重な対応が必要である。
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