都市部のセーフティネット病院におけるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染、重症度および再発に関する予測モデルの一般化可能性★

2024.04.06

Generalizability of predictive models for Clostridioides difficile infection, severity and recurrence at an urban safety-net hospital

N. Rafalko*, J.L. Webster, G. Jacob, M.A. Kutzler, N.D. Goldstein
*Drexel University Dornsife School of Public Health, USA

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 10-20


緒言

クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染の予測モデルは、高リスク患者を特定し、臨床医が感染を予防することに役立つ。現在の予測モデルについては一般化の可能性について問題が認められているが、著者らの知る限り、それらの問題は定量化されていない。

方法

都市部のセーフティネット病院からの症例対照サンプリングにより、多変量ロジスティック回帰を用いて、C. difficile 感染、重症度および再発の予測モデルを作成した。5 分割交差検証を用いてモデルを検証し、外的妥当性を向上させるために、2 つの異なる管轄区域の定義に基づく逆確率重み付けを用いた。赤池情報量基準(AIC)、受信者動作特性曲線下面積(AUROC)、感度および特異度と、ブートストラップ法による信頼区間(CI)を用いて、モデル適合度および性能を評価・比較した。

結果

重み付け前後の性能の変化はすべてのモデルで小さかったが、再発モデルに重み付け後の差はより明らかであった(非加重モデルおよび 2 つの加重モデルで AUROC 値はそれぞれ 0.78、0.76、0.71)。全体として、感染モデルが最も性能が高く(AUROC 0.82、95%CI 0.78 ~ 0.85)、次いで再発モデル(AUROC 0.78、95%CI 0.69 ~ 0.86)、重症度モデル(AUROC 0.70、95%CI 0.63 ~ 0.78)の順であった。

結論

重み付け後のモデルの性能に大幅な変化は認められなかったことから、C. difficile 感染、重症度および再発を予測するモデルは、患者選択因子に影響を受けない可能性が示唆された。しかし、逆確率重みを用いてこれらの管轄区域の影響力への対処を検討したいと考える研究者もいるかもしれない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)の発症リスクの高い患者を特定することで適切な対応が可能となるため、予測モデルは有用である。これまで予測因子として、低アルブミン、プロトンポンプ阻害剤投与、在院日数、広域抗菌薬投与などが報告されている。一方、セーフティネット病院は保険状況や支払い能力にかかわらず医療を提供する病院であり、医療システムが異なる場合には医療提供状況や患者背景も変化するため、CDI の予測モデルを一般化して適用できない可能性があり、本論文の先行研究において全国 CDI サーベイランスの統計結果とは一致しない結果が部分的にあった。

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