2 型糖尿病患者における関節全置換術後の人工関節周囲感染症のリスクに対する台湾のDiabetes Shared Care Program の影響:8 年間の集団ベース研究

2024.03.31

Effect of Taiwan’s Diabetes Shared Care Program on the risk of periprosthetic joint infection after total joint arthroplasty in patients with type 2 diabetes mellitus: an eight-year population-based study

Y-H. Lin*, C-H. Lin, Y-Y. Huang, P-H. Liu, Y-C. Lin
*Chang Gung Memorial Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2024) 145, 34-43



背景

人工関節周囲感染症(PJI)は、糖尿病患者における関節形成術後の重大な合併症であり、コントロール不良の糖尿病が PJI のリスク因子として同定されている。台湾の Diabetes Shared Care Program(DSCP)は、総合的な糖尿病治療を目的に設立された。

目的

PJI 発症率および患者の医療費に対する DSCP の影響を評価した。

方法

台湾の National Health Insurance Research Database における 2010 年から 2020 年のデータを、関節形成術を受けた 2 型糖尿病(DM)患者に焦点を合わせて解析した。被験群は DSCP 参加者とし、年齢、性別および併存疾患について傾向スコアをマッチさせた非参加者を対照群とした。主要評価項目は PJI 発症率の 2 群間の差とし、副次的評価項目は医療費の差とした。

結果

被験群は、関節形成術を受け、DSCP に参加した 2 型糖尿病患者 11,908 例で構成され、うち 128 例が PJI を発症した。非参加者群では、184 例が PJI を発症した。PJI 発症率の 2 群間の差は統計学的有意であった(1.07% 対 1.55%)。被験群の医療費は、PJI 発症の有無にかかわらず、顕著に低かった。多変量回帰分析により、対照群の患者、70 歳超の患者、男性、肥満または貧血を有する患者において PJI 発症リスクが高いことが示された。

結論

本研究では、関節形成術後の糖尿病患者において、DSCP への参加により PJI 発症リスクが低下し、年間医療費が減少することが示されている。したがって、DSCP は、関節全置換術の準備をしている糖尿病患者に推奨される選択肢である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

台湾で行われている DSCP と呼ばれる医師だけでなく看護師や食事療養士などによる定期的な生活指導のモニタリングやフィードバックによる糖尿病患者の治療の質向上のための統合ケアモデルにより人工関節周囲感染症発症リスクが減ることを示した研究。DSCP はこれ以外にも心血管疾患や呼吸器疾患など、様々な糖尿病関連合併症を減らすことが示されている。

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