手術以外での中枢神経系の院内感染が疑われた場合における臨床的特徴と臨床検査的特徴による診断の正確度★

2024.03.31

Diagnostic accuracy of clinical and laboratory characteristics in suspected non-surgical nosocomial central nervous system infections

I.E. van Zeggeren*, C.J. Pennartz, L. ter Horst, D. van de Beek, M.C. Brouwer, I-PACE Study Group
*Amsterdam UMC, University of Amsterdam, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2024) 145, 99-105



背景

手術以外で入院した患者の髄膜炎の診断は、難しいことが多く、臨床的特徴、臨床検査的特徴、放射線学的特徴による診断の正確度は分かっていない。

目的

手術以外での中枢神経系の院内感染が疑われる患者の個々の臨床的特徴による診断の正確度を評価すること。

方法

中枢神経系の感染が疑われる成人を対象としたオランダでの前向き多施設共同コホート研究に、手術以外での中枢神経系の院内感染の疑いによる腰椎穿刺を受けた連続患者を組み入れた。すべてのエピソードを、参照基準として、5 つの最終的な臨床診断のカテゴリーに分類した。すなわち、中枢神経系の感染、中枢神経系の炎症性疾患、全身の感染、その他の神経疾患、全身性ではない非神経疾患である。

結果

2012 年から 2022 年の間に、コホートに組み入れられた 1,275 例の患者のうち 114 例(9%)に、手術以外での中枢神経系の院内感染の疑いがあった。16 例(14%)は確定診断され、そのうち 4 例(25%)が細菌性髄膜炎、9 例(56%)が中枢神経系のウイルス感染、2 例(13%)が真菌性髄膜炎、1 例(6%)が寄生虫性髄膜炎であった。個々の臨床的特徴による診断の正確度は、概して低かった。感度(81%、95%信頼区間[CI]:54 ~ 96)と陰性適中率(NPV)(96%、95%CI:90 ~ 99)が最も高かったのは、脳脊髄液中白血球数の上昇であった。神経学的検査または脳脊髄液の検査で異常があることを組み合わせたとき、中枢神経系の感染を診断する感度は 100%(95%CI:79 ~ 100)、NPV は 100%(95%CI:78 ~ 100)であった。脳脊髄液の検査によって、47%の患者で、臨床的な対処が変更された。

結論

個々の臨床的特徴による診断の正確度は低かった。感度と NPV が最も高かったのは、脳脊髄液中白血球数の上昇であった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

脳神経外科手術以外で入院中に発生する中枢神経系の感染症は頻度が極めて低く、また診断に苦慮することが多い。それらの患者は意識障害を伴った ICU 患者であったり、感染巣不明の免役低下患者であり、脳脊髄液検査を実施せずに診断することは不可能である。中枢神経系感染症の正確な診断には、腰椎穿刺が禁忌でない限り、脳脊髄液の採取を積極的に実施し、白血球数やその分類、蛋白濃度等の血液・生化学的検査に加え、近年脳脊髄液の網羅的 PCR 検査による病原体診断が容易となっており、これらの一連の検査を実施することで、中枢神経系の感染症の正確な診断と適切な治療に結びつき、患者の予後の改善にもつながる。

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