ドイツの外来透析施設における透析関連感染イベントを対象とした新しいサーベイランスシステムの導入★
Implementation of a new surveillance system for dialysis-associated infection events in outpatient dialysis facilities in Germany B. Weikert*, T.S. Kramer, F. Schwab, C. Graf-Allgeier, J-O. Clausmeyer, S.I. Wolke, P. Gastmeier, C. Geffers *Charité–University Hospital Berlin, Germany Journal of Hospital Infection (2023) 142, 67-73
緒論
維持血液透析を受けている患者は、カテーテル関連感染症のリスクを有している。これまでに、ドイツにおいて血液透析を受けている外来患者における感染イベントを評価するための標準化されたサーベイランスツールは存在しなかった。そこで本研究では、外来透析施設にオンラインベースのサーベイランスツールを導入すること、また 2019 年 10 月から 2021 年 9 月のドイツにおける血液透析患者を対象に得られた最初の全国サーベイランスデータについて報告することを目的とした。
方法
外来透析施設から、3 種類の透析関連感染イベント(DAIE)、すなわち血流感染症、静注抗菌薬開始、および局所アクセス部位感染症について報告させた。分母データは、各施設における月当たり血液透析治療件数とした。DAIE の発生率は、血管アクセスの種類によって層別化して算出した。
結果
合計で、外来透析施設 43 施設から 723 件の DAIE が報告され、これには血流感染症 63 件、静注抗菌薬開始 439 件、および局所アクセス部位感染症 221 件が含まれた。DAIEの全発生率は、サーベイランス期間中に 1,000 透析治療当たり 0.51(1,413,457 治療当たり 723)であった。DAIE の全発生率は、動静脈瘻(AVF)を有する患者では 1,000 透析治療当たり 0.13(990,392 治療当たり 126)、動静脈グラフトを有する患者では 1,000 透析治療当たり 0.41(99,499 治療当たり 41)、ならびに中心静脈カテーテル(CVC)を留置された患者では1,000 透析治療当たり 1.68(318,757 治療当たり 535)であった。CVC と AVF の間におけるDAIEの発生率比は 13.2(95%信頼区間 10.9 ~ 16.0)であった(P < 0.001)。
考察
これら 2 年間の感染症データは、ドイツの外来透析施設における初の標準化されたデータとなるものである。感染症の発生率は、CVC 留置患者では他の種類の血管アクセスと比べて高かった。オンラインベースの本サーベイランスツールは、血液透析患者において感染予防策が効果的となる対象を特定する上で有用になると考えられる。
監訳者コメント:
ドイツからの外来透析患者の全国規模の透析関連感染イベント(DAIE)サーベイランスの報告。アメリカ、オーストラリアについでの大規模なサーベイランスである。CVC 留置患者は AVF 患者と比較して DAIE のリスクが 13.2 倍増加しており、バスキュラーアクセスの違いが血液透析患者における透析関連感染症の大きなリスクになることを裏付けている。
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