数学的モデルは、医療施設における SARS-CoV-2 の伝播と制御の理解にどのように貢献したか?システマティックな検索とレビュー

2023.11.30

How have mathematical models contributed to understanding the transmission and control of SARS-CoV-2 in healthcare settings? A systematic search and review

D.R.M. Smith*, S. Chervet, T. Pinettes, G. Shirreff, S. Jijón, A. Oodally, K. Jean, L. Opatowski, S. Kernéis, L. Temime
*Université Paris-Saclay, UVSQ, France

Journal of Hospital Infection (2023) 141, 132-141



COVID-19 のパンデミックの始まり以来、数学的モデルは、医療施設における COVID-19 の制御に関する公衆衛生上の推奨事項に情報を提供するのに広く使われてきた。この研究の目的は、医療施設における SARS-CoV-2 伝播モデルについてのシステマティックレビューを実施し、院内 COVID-19 についての理解に対するこれらのモデルの貢献をまとめることであった。発表され PubMed に載っている論文のシステマティックな検索とレビューを実施した。医療施設における SARS-CoV-2 のヒトからヒトへの動的な伝播を記述したモデル化研究で、2022 年 2 月中旬までに発表されたものを組み入れた。モデルの大部分は、高所得国の急性期ケア施設と長期ケア施設に焦点を合わせていた。モデルは、アウトブレイクのリスクを定量化していて、施設とパンデミックの時期によって大きなばらつきが見られた。サーベイランスに関しては、COVID-19 の予防には、無症状感染率が高いことから、症状に基づく検査ではなく規定通りの検査が極めて重要であることがはっきりと示された。サーベイランスの影響は、検査の頻度、診断の感度、検査所要時間に、決定的に依存していた。医療の再編成も、大きな疫学的影響を及ぼしたことが証明された。すなわち、症例を隔離し、ヒトとヒトの接触を制限することによる明らかな利益を超えて、より複雑な戦略(スタッフのスケジュールをずらす、免疫に基づくコホーティング)が感染のリスクを減少させた。最後に、ワクチン接種の影響は、COVID-19 の負荷を制限するのには非常に有効であったが、感染の獲得、症状の発現、伝播の推定される機序に対する影響によって、かなり異なっていた。モデル化の結果は、SARS-CoV-2 やその他の病原性呼吸器ウイルスの将来の波を制御する戦略に情報を提供できる可能性のあるエビデンスの広範囲の基礎を形成する。我々は、医療に関連する将来のアウトブレイクをモデル化するための新しい方法を、モデルの効率を高め、意思決定への貢献を増加させることを目的として、提案する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

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