事前に洗浄しない自動 UV-C 照射よりも、予め含浸したワイプによる用手消毒の優位性が上回る★★
Superiority of manual disinfection using pre-soaked wipes over automatic UV-C radiation without prior cleaning B. Knobling*, A. Ulatowski, G. Franke, C. Belmar Campos, H. Büttner, E.M. Klupp, P.M. Maurer, F.H.H. Brill, J.K. Knobloch *University Medical Center Hamburg-Eppendorf, Germany Journal of Hospital Infection (2023) 140, 72-78
背景
広範囲の微生物に対する短波長紫外線(UV-C)照射の有効性は、複数の研究で明らかにされているが、特異的な線量と微生物減少の程度の違いが確認された。さらに、実験室検査の状況は実際とは大きくかけはなれているため、検査で得られた有効性は、実際には必ずしも想定どおりになるとは限らない。したがって、代表的な実地試験において、UV-C の有効性を試験することが重要である。そこで、本研究では、用手消毒と比較して自動 UV-C を評価するために、実地試験を開発し構築することを目的とした。
方法
消毒済み表面と非消毒表面の代表的データセットを得るために、自然に高度に汚染された表面から、消毒前後にスワブ法によりサンプルを繰り返し採取した。その後、UV-C 照射とアルコールワイプによる完璧な用手による清拭消毒を実施し、対数減少値および消毒の達成を評価した。
結果
通常どおりほぼ均一に細菌によって自然に汚染された表面が、実地試験に特に適していると確認された。平均汚染は、UV-C 消毒では 23.3 cfu/cm2 から 1.98 cfu/cm2 (対数減少値 0.9)に減少、用手消毒では 29.7 cfu/cm2 から 0.26 cfu/cm2(対数減少値 1.2)に減少した。表面消毒の達成度が、UV-C 消毒では 75.5%であったのに対し、用手消毒では 98.1%であった。
結論
完璧な用手による清拭消毒は、自動 UV-C 消毒よりも、対数減少値および消毒の達成度がわずかに高いことが示された。技師に依存しない UV-C 消毒が達成できると、用手消毒に加えて、消毒効率をさらに改善する可能性がある。
監訳者コメント:
COVID-19 の世界的流行以後 UV-C による環境消毒法が一般的になっているが、「医療現場での消毒交換に関する評価方法」が欧州や国際的な基準は定まっていない。UV-C については波長、線量、相対湿度や温度により効果が変化し、高度の汚染や影となる部分では効果がないなど、標準化のためには解決すべき課題が残されている。医療施設の環境は、さまざまな有機物や微生物で汚染されており、環境表面を UV-C のみで完全に消毒することは不可能であり、現時点では UV-C による環境消毒は低レベル消毒に分類されており、環境清拭消毒との組み合わせによる消毒が必要である。
同カテゴリの記事
Clonal replacement of meticillin-resistant Staphylococcus aureus during repeated outbreaks in a long-term care facility
- Cohen*, M. Afraimov, T. Finn, F. Babushkin, K. Geller, H. Alexander, S. Paikin
*Sanz Medical Center, Laniado Hospital, Israel
Journal of Hospital Infection (2021) 107, 23-27
Impact of carbapenem-targeted antimicrobial stewardship interventions: an interrupted time-series analysis H-J. Son*, S. Bae, K. Cho, I. Park, J. Kim, H. Han, E.O. Kim, J. Jung, S-H. Kim, S-O. Lee *University of Ulsan College of Medicine, South Korea Journal of Hospital Infection (2023) 140, 132-138
How long do nosocomial pathogens persist on inanimate surfaces? A scoping review L. Porter*, O. Sultan, B.G. Mitchell, A. Jenney, M. Kiernan, D.J. Brewster, P.L. Russo *Cabrini Health, Australia Journal of Hospital Infection (2024) 147, 25-31
Factors predicting non-ventilated hospital-acquired pneumonia: systematic review and meta-analysis S.A. Lukasewicz Ferreira*, C. Hubner Dalmora, F. Anziliero, R. de Souza Kuchenbecker, P. Klarmann Ziegelmann *Hospital de Clínicas de Porto Alegre and Qualis, Brazil Journal of Hospital Infection (2022) 119, 64-76
A midwifery-led prevalence programme for caesarean section surgical site infections
E. Baxter*
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 107, 78-81