多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による集中治療室のアウトブレイク:シンクに焦点を当てる★★
An intensive care unit outbreak with multi-drugresistant Pseudomonas aeruginosa ‒ spotlight on sinks V. Schärer*, M-T. Meier, R.A. Schuepbach, A.S. Zinkernagel, M. Boumasmoud, B. Chakrakodi, S.D. Brugger, M.R. Fröhlich, A. Wolfensbergera, H. Sax, S.P. Kuster, P.W. Schreiber *University Hospital Zurich and University of Zurich, Switzerland Journal of Hospital Infection (2023) 139, 161-167
背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やその他のグラム陰性菌は、医療施設の湿潤環境下で生存し続ける能力があるが、これらの区域からの拡散は、結果として医療関連感染症のアウトブレイクを引き起こす可能性がある。
方法
本研究では、スイスの大学病院 1 施設の集中治療室 3 室における多剤耐性緑膿菌によるアウトブレイクの調査および封じ込めについて報告する。合計で患者 255 例および環境サンプル 276 個を対象に、多剤耐性緑膿菌のアウトブレイク株についてスクリーニングを行った。環境サンプル採取、患者および環境分離株の分子特性の解明、ならびに実施した制御戦略(水を使用しない患者ケアを含む)について記述する。
結果
2019 年 3 月から 11 月にかけて、アウトブレイクの患者が 29 例発生した。環境サンプル採取により、共通の下水システムを使用している集中治療室 3 室のシンクの管から採取したサンプル 9 個、ならびに胃カメラ 1 台からアウトブレイク株が検出された。シンクの管交換から 3 週間後、管から採取したサンプルでアウトブレイク株が再検出され、新たな感染患者が複数同定された。患者近傍および調剤区域にあるすべてのシンクを撤去し、水道水の使用を最小限に抑えた後に、アウトブレイクは終結した。複数部位塩基配列タイピング(MLST)から、患者分離株 29 株中 28 株および環境分離株全 10 株においてクローン性(シークエンス型[ST]316)が示された。
結論
シンクの撤去と水を使用しない患者ケアの導入を組み合わせることで、多剤耐性緑膿菌によるアウトブレイクは終結した。集中治療室におかれたシンクは、湿潤環境で持続的に生存する緑膿菌やその他の細菌による点源アウトブレイクのリスクをもたらす可能性がある。
監訳者コメント:
スイスからの報告。耐性グラム陰性菌のアウトブレイクがシンクを介しておきることはしばしば報告されている。シンクの消毒の効果は限定的で、シンクを交換することでアウトブレイクが収束することが多いが、その後、アウトブレイク株が再検出されることも少なくない。シンクなどの湿潤環境には常に耐性グラム陰性菌がいることを念頭に置く必要がある。その点では、本研究で行われている水道水の使用を最小限に抑える対策は意味がある。
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